Alcatraz

承前*1

高史明「石原都知事がまたインターネット発のコピペに釣られてた件」http://ameblo.jp/silegrainnemeurt/entry-10518527608.html



 問題の記事は週刊文春4月15日号での石原都知事のインタビュー。


NYではこんな日本の冗談が流行っているという。「日本人が鳩山首相のことを”サギ”だと言ったら,アメリカ人は”チキン”だと言う。中国人は”カモ”だといい,ヨーロッパ人は”アホウドリ”と言う。”本人は”ハト”だと言っているけど,本当は”ガン”なのじゃないか」*2


 ・・・あのさ。それがジョークとして意味を成すためには,Hatoが鳥の名前だって分かんなきゃならないし,サギが鳥と犯罪の,ガンが鳥と病気の同音異義語を持つことが分かんなきゃいけないわけで。カモは英語では格好の獲物ではなくて魅力のない人の比喩だし。NYにはどんだけ日本語通多いんだ。このジョークしばらく前からネットで流行ってて,政権批判は大いに結構なんだけど,アメリカ発にしてしまうのはちょっと恥ずかしい。年取ってからインターネットを覚えたから仕方ないのかもしれないけど,もうちょっとメディア・リテラシーを身につけないと恥を垂れ流すだけだと思う。

このジョークが「しばらく前からネットで流行」っていたことは知らなかった。でも、「アメリカ発にしてしまうのはちょっと恥ずかしい」というか、そもそもジョークというのは屡々そうなのだけど、これにしてもジョークとして意味を持つのは日本語においてであって、半ば翻訳不能だ。無理に英訳したとしても、ここで高氏が試みているような訳註が必要になってくる。英語のalbatrossには日本語のようなあからさまな軽蔑的ニュアンスはない。(ゴルフにおいては)鷲(eagle)よりも格が下ではあるけれども。漢語の信天翁にも悪いニュアンスはなさそうだ。もしかしたら、NYで流行りといっても、実は田母神将軍ライヴのオーディエンスの範囲だったりして*3。「世界の中心」でIを叫んでろよ。
ところで、albatrossの語源は西班牙語/葡萄牙語のalcatraz。但し、西班牙語や葡萄牙語ではペリカンを意味する。桑港のあの監獄島をアホウドリと訳してしまうと*4、かなりイメージが変わってしまう。それにしても、PILの”Albatross”はいい曲だ。
Second Edition

Second Edition

*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100419/1271645099 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100423/1272044223

*2:石原慎太郎の発言は区別するためにイタリックにした。高氏のエントリーではフォントの色を変えて引用されている。

*3:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100423/1272025220

*4:ペリカンでもいいけれど。