『THIS IS IT』など

先日、Kenny Ortegaの『THIS IS IT』を観た。その突然の死によって、幻のコンサートとなってしまったマイケル・ジャクソン*1の倫敦公演のリハーサルのドキュメント。関係者しかいない広いホールのステージで、マイケルは淡々と歌い・踊り、そしてダンサー、バンドのメンバー、スタッフに指示を出していく。リハーサルは大きなトラブルもなく順調に進んでいく。勿論、マイケル・ジャクソンのファンにとっては、彼のどの所作も言動も目や耳に焼き付けておくべき貴重なものなのだろうけど、私のようなファンとはいえない者にとってもこの映画が感動的なのは、私たちが〈究極のオチ〉、つまりこのリハーサルに本番はなかったということを既に知ってしまっているからだろう。
個人的には、バックのOrianthi Panagarisという白人女性のギタリストが如何にもロック姐さんという感じで、滅茶かっこよかった。それから、「スリラー」は新しい映像(というか、あのPVの続編)が準備されていて、これは是非とも本番の映像ということで見たかった。

『放送禁止 劇場版 ~ニッポンの大家族 Saiko! The Large family』は多重的なパロディになっていて、面白かった。先ずは〈ドキュメンタリー〉というジャンルのパロディ。何しろ「フェイク・ドキュメンタリー」なのだから。それから、日本のTV局が好きらしい〈大家族物〉というジャンル*2のパロディ。また、社会問題や不幸やオカルトを上から目線で、しかも感動を込めて語るのが好きな日本のTV(というかワイドショー的なるもの)のパロディ。社会問題としては、家庭内暴力もあるしヒッキーもある。不幸もてんこ盛りで、特に母親の「司」さんは最後に崖から落ちて頭を打って、昏睡状態に陥ってしまう。妻の連れ子たちの冷たい視線を浴びながらも、懸命に彼ら/彼女らと馴染もうと努力する父親。子どもたちも父親(継父)の誠実さに打たれて、彼を父親として認めるようになるという感動のストーリー。また、一家の不幸の根本的原因は一枚の「心霊写真」にあったという驚愕の事実。この映画は、カナダ人の映像作家Veronica Addisonが埼玉県所沢市に住む一家を通訳を介して取材し、上述の不幸や感動、またオカルト的事実を明らかにしていくというかたちを取る。これは、所謂(日本人にとっての)ガイジンという存在のパロディであり、西洋人による日本に対するオリエンタリズム的な幻想と日本人による西洋人(ガイジン)に対するオクシデンタリズム的な幻想が同時に笑われることになる。