やっぱり駄目だ

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植草一秀*1ちぇんちぇー、「デフレ」*2を語る。古寺多見さんは「注目に値するし支持できる論考」と言っているが*3、一読したところ、こりゃ駄目だ(いかりや長介)と思ってしまった。


 「デフレ」の第一義は「物価下落」である。しかし、当時の日本が直面していたのは「物価下落」だけではなかった。


 日本経済は、「大不況」、「金融不安」、「物価下落」に直面していたのだ。経済状況を現実に即して表現するなら、「大不況」、あるいは「恐慌」の方が適切であったと考えられる。


 それにもかかわらず、「デフレ」という用語が用いられた。この用語法を誘導したのは財務省である。「デフレ」の第一義は「物価下落」である。「物価」の所管官庁は日本銀行である。つまり、日本経済悪化の責任を負うべきは日本銀行であり、日本経済悪化に対して率先して政策対応を示すべき期間は日本銀行である、との主張を展開するために「デフレ」という言葉が用いられたのである。

先ずこれって、無意味な言葉遊びなんじゃないか。「デフレ」というのはモノ(財・サーヴィス)よりも銭に対する選好が強い状態、(深尾光洋氏の言葉で言えば)「不動産や株式などの実物資産が売られて、現金、預金、国債に資金がシフトするタイプのバブル」*4をいうので、経済の不活性や収縮を表すのに「デフレ」という言葉を使って悪いわけはない。
また、

今回、鳩山政権が「デフレ宣言」を発表した。発表と同時に、日本銀行による政策対応を求める声が広がっている。これこそ、財務省の狙いとするところである。財政政策に負担をかけず、日銀の金融政策にプレッシャーをかけようとするのだ。


 しかし、この判断は間違っている。日本銀行は超金融緩和政策を継続するべきだが、日銀の追加政策発動の余地は小さい。量的金融緩和政策が過去に採用されたが、その政策効果は限定されたものである。


 2010年にかけての最大の懸念要因は、財政政策が日本経済に強烈なデフレインパクトを与える可能性が高まっている点にある。2009年度の補正後予算が102兆円規模、国債発行金額が51兆円になることを踏まえると、鳩山政権が編成を進めている2010年度当初予算の92兆円規模、44兆円の国債発行金額は2010年度の日本のGDPを1.5〜2.0%ポイントも押し下げるものなのである。


 鳩山政権が経済政策運営を誤る可能性が生じている。財務省が政策運営を仕切り始めていることがその主因である。財務省は1997年度、2001年度と経済政策運営を誘導して、二度とも日本経済を崩壊に導いた。橋本政権はつぶれ、小泉政権も破たんすれすれの状況に追い込まれた。小泉政権が延命したのは、税金によるりそな銀行救済という禁断の金融行政に手を染めたからである。


 財務省は中期的に激しいインフレ誘導を狙っている。巨大な借金を帳消しにするには、インフレ誘導に勝る手法が存在しないからである。物価下落は国民の生活費負担を大幅に低下させている。デフレには個人の実質所得を増加させる側面があり、デフレを一概に悪と決め付けることは間違いである。

完全に間違ったことは言っていないのだが、陰謀理論というスパイスを過剰に利かせるのが植草クォリティか。旧大蔵省が分割されて以降、金融政策の責任は内閣府に属する金融庁が負っている筈なのだが、それが言及されていないのは不可解。旧大蔵省ならともかく、現在の制度上、財務省が金融政策に公式に介入することはできない筈なのだが。また、2001年以降の事態については、政府筋の懸念にも拘わらず日本銀行が独断専行的に政策を発動して経済を悪化させたというのは経済学者の間では定説になっていると思ったが、植草ちぇんちぇーにとっては、これも「財務省」が悪いということになるのか。また、財務省が(短期的には)目論んでいる緊縮財政と「財務省は中期的に激しいインフレ誘導を狙っている」ということは矛盾しないのかと思った。しかし、上にも言及したように、デフレ=「現金、預金、国債に資金がシフトするタイプのバブル」なのだから、このままデフレを放置することこそがハイパーインフレーションを惹き起こす最適の途ということもできる。ただ、その場合、インフレ対策として超高金利政策が発動されるわけだし、また政府財政が黒字体質になることも考えられないので、インフレによって借金がちゃらになったと喜んだのも束の間、今度は政府が今以上の厳しい利子負担に苦しまなければならないだろう*5。また、植草ちぇんちぇーは「デフレを一概に悪と決め付けることは間違いである」という〈良いデフレ〉論を主張している。一般に物価水準が落ちても、それが新技術の導入などによる生産性の上昇によってもたらされたものなら、一般的な給与水準は上昇している筈であり、完全に悪いとはいえない。こういうのを「デフレ」といえるかどうか。また現在、一般的な給与水準は上昇していますか。現在の状況は、寧ろたんに高級なものが売れなくなって、多くの人が安物買いに走っているということなのでは? それは既に安定した職や潤沢な収入を得ている人にとってはいい面もあるかも知れないが、多くの人にとっては物価が下がったのを喜んでいるうちに、自分の時給もバーゲン価格になっていた、さらには自分の職がなくなっていたということではないのか。
まあ、植草は植草。