譚盾『秦始皇』

Tan-Dun: First Emporer [DVD] [Import]

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譚盾*1のオペラ『秦始皇』の紐育メトロポリタン・オペラ・ハウスでのワールド・プリミエのDVD*2を観る。
始皇帝を演じるのはプラシード・ドミンゴ狂言方(といっておこう)は「陰陽大師(Yin-Yang Master)」(WU Hsing Kuo)とシャーマン(Michelle DeYoung)。WU Hsing Kuoは京劇役者で、彼だけが中国語で歌う。ここで、京劇/オペラ、中国語/英語という対立がマークされる。
秦王は中原統一に突き進んでいたが、高漸離(Paul Groves)という男を捜していた。彼は秦王が幼少時に衛国に人質として預けられていた頃、同じ乳を吸って育った、秦王にとっては弟或いは「影子(shadow)」というべき存在。また、高漸離には歌を作る才能があり、秦王は彼に来るべき帝国のための「国楽」を作曲させようとしていた。一方、秦王は娘の越陽公主(Elizabeth Futral)を部下の王将軍(HAO Jiang Tian)に与えようとするが、彼女はそれを拒み、やがて見つけだされた高漸離と密通してしまう。秦王の怒りにも拘わらず、高漸離は国楽の作曲のために生かされ続ける。第二部は秦王が最初の皇帝としてとして登極する儀礼始皇帝にとっては栄光の頂点の筈であったが。王将軍との結婚を拒否した越陽公主は自害し、幽霊として皇帝の前に現れる。王将軍も公主の後を追うように自害。さらに、高漸離も始皇帝を呪いながら、自らの舌を噛み切って自害してしまう。ここで、始皇帝は圧倒的な孤独を自覚する。さらに高漸離が完成した音楽は人民の怨嗟を表現するものだった。
作曲家の高漸離という副主人公を設定することによって、(光/影である)国家権力/音楽の関係についてのメタ=コメンタリーになっている。
台本は譚盾と中国系作家のHA Jin。衣裳デザインはワダ・エミ。舞台演出は張藝謀*3。また、中国人ダンサーの黄豆豆(Dou Dou HUANG)*4が出演しているのだが、彼が登場する意味は今ひとつよくわからなかった。

始皇帝といえば、http://d.hatena.ne.jp/t-hirosaka/20081224/1230084193に「兵馬俑」を巡る論争の紹介あり。「兵馬俑」については、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060919/1158634841http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061101/1162411610http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070221/1172027771も。そういえば、塚本青史*5の『張騫』*6で、司馬遷は(張騫からの視線において)嫌な奴として描かれていたなということを思い出す。また、陳凱歌*7の『始皇帝暗殺』はつまらない映画だったなとか。

張騫 (講談社文庫)

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始皇帝暗殺 DTS特別版 [DVD]

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