『朝日』(時事通信)の記事;
例えばぼーっと空を眺めているだけなら、「天動説」は私の経験にぴったりとフィットする。私は太陽や月や星々が空を移動するのを知覚しているが、大地が動いていることを知覚することはない。だから、地動説か天動説かというのは〈信じる〉という言い方でしか語れないのだろうか。勿論、科学的知識を学習すれば、天動説は誤っており地動説が正しいということを知ることができる。しかし、科学的知識を得たからといって、太陽や月や星々が静止して見えるようになるということはない。とすれば、地動説は正しいと思う、或いはそのように発話するということはどういうことなのか。やはり、知覚における明証性を振り切って〈信じる〉ということになるのか*1。こんなことを考えたのは、上記の調査で、天動説が間違っているのは理屈ではわかるけれど、信じられないと思う人はどう答えるのかなと思ったからだ。
ロシア国民の3割、天動説信じる 「恐竜時代に人類」も2007年04月22日15時18分
「太陽は地球の周りを回っている」―。ロシアで国民の約3割がこう信じていることが明らかになり、関係者の間に衝撃が広がっている。有力紙イズベスチヤがこのほど、全ロシア世論調査研究所から入手した調査結果として伝えた。
調査はロシアの153都市で、1600人を対象に基本的な科学知識を試す形で行われた。
この結果、天動説を信じている人は28%に上った。ほかに「放射能に汚染された牛乳は煮沸すれば飲んでも安全」との回答が14%、「人類は恐竜時代に既に出現していた」との回答が30%に上った。
また、科学的な知識だけを信じる人は20%しかおらず、あとは魔法を含む何らかの超自然的な力の存在を信じていることも明らかになった。(時事)
http://www.asahi.com/science/update/0422/JJT200704220005.html
「科学的な知識だけを信じる人は20%しかおらず、あとは魔法を含む何らかの超自然的な力の存在を信じていることも明らかになった」というけれど、「魔法」って具体的にどういうものなのか興味はある。露西亜では迷信が蔓延っているということは聞いたことはある。それも当然だろう。蘇聯時代の反宗教的政策、それから蘇聯崩壊後は社会変動も激しく、混乱している。正教は再活性化しているとはいえ、帝政時代のような権威を恢復してはいない。もし全体主義的な体制が復活したり、原理主義的な宗教が圧倒的な影響力を持ったりすれば、迷信はたちどころに抑圧されてしまうだろう。迷信的なもの、オカルト的なものに最も厳しい態度を取っているのは、イスラームや基督教の原理主義者である。何しろ、『ハリー・ポッター』を焚書にしてしまうわけだから。
*1:「信じる」ということについては、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070123/1169521302でも触れた。