「選手一同」

承前*1

朝日新聞』の記事;


日大選手ら声明文「監督・コーチに盲目的に従ってきた」
2018年5月29日17時52分


 アメリカンフットボールの日本大と関西学院大の定期戦(6日、東京)で日大選手が関学大選手に悪質なタックルをして負傷させた問題で、日大の選手たちが声明文を発表した。声明文は次の通り。

 本年5月6日に行われました関西学院大学アメリカンフットボール部と私たち日本大学アメリカンフットボール部の第51回定期戦での私たちのチームメイトの反則行為について、ケガを負ったQBの選手とご家族の皆様にお見舞いを申し上げるとともに、関西学院大学アメリカンフットボール部関係者の皆様、関東学生アメリカンフットボール連盟その他の関係者の皆様に、多大なご迷惑とご心労をおかけしてしまったことを、私たち日本大学アメリカンフットボール部選手一同、心よりお詫(わ)び申し上げます。本当に申し訳ありませんでした。また、私たちの行為によりアメリカンフットボールという競技そのものへの信頼が損なわれかねない状況に至ってしまったことについて、アメリカンフットボールを愛する全ての皆様、そして社会の皆様に深くお詫び申し上げます。

 今回の件が起こってから、私たちは、どうしてこのようなことになってしまったのか皆で悩みながら何度も話し合ってきましたが、まだ明確な答えが見つけられたわけではなく、これからも話し合いは続けていきたいと思います。また、これから捜査機関による捜査や大学が設置する第三者委員会の調査が行われるようですので、私たちも全面的に協力して、その結果も待ちたいと思います。なお、それらの捜査・調査に際しては、関係者の皆様にも、私たちが信じているチームメイトのように、誠実にありのまま全てをお話しして、その責任をしっかり受け止めて頂きたいと思っています。

 ただ、少なくとも、私たちは、私たちの大切な仲間であるチームメイトがとても追い詰められた状態になっていたにもかかわらず、手助けすることができなかった私たちの責任はとても重いと考えています。これまで、私たちは、監督やコーチに頼りきりになり、その指示に盲目的に従ってきてしまいました。それがチームの勝利のために必要なことと深く考えることも無く信じきっていました。また、監督・コーチとの間や選手間のコミュニケーションも十分ではありませんでした。そのような私たちのふがいない姿勢が、今回の事態を招いてしまった一因であろうと深く反省しています。

 私たちは、日本大学アメリカンフットボール部全体が生まれ変わる必要があることを自覚しています。今後、具体的に何をしていかなければならないかについては、これから選手一同とことん話し合って決めていきたいと思います。ただし、絶対に必要だと今思っていることは、対戦相手やアメリカンフットボールに関わる全ての人々に対する尊敬の念を忘れないこと、真の意味でのスポーツマンシップを理解して実践すること、グラウンドではもちろんのこと、日常生活の中でも恥ずかしくない責任ある行動を心がけるなど常にフェアプレイ精神を持ち続けることを全員が徹底することです。そのために何をしていく必要があるのか、皆様にご指導頂きながら、選手一人ひとりが自分自身に向き合って考え抜くとともに、チーム全体でよく話し合っていきたいと思います。

 そして、いつか、私たち日本大学アメリカンフットボール部が、部の指導体制も含め生まれ変わったと皆様に認めていただいた時には、私たちが心から愛するアメリカンフットボールを他のチームの仲間たちとともにプレーできる機会を、お許しいただければ有難(ありがた)いと思っています。また、そのときには、もし可能であれば、私たちのチームメイトにも再びチームに戻ってきてもらい、一緒にプレーできればと願っています。

 私たち選手一同の今の思いは以上のとおりです。私たちは、今回の件の深い反省のもと、真剣に、謙虚に、一丸となってチーム改革を実行していく所存ですので、どうかご指導のほど、よろしくお願い致します。

 平成30年5月29日

 日本大学アメリカンフットボール部選手一同
https://www.asahi.com/articles/ASL5Y5SMSL5YUTQP038.html

See also
朝日新聞「日大アメフト部が父母会で謝罪 「指導者側と意識に差」と保護者」https://www.huffingtonpost.jp/2018/05/27/nichidai-football-parents_a_23444762/
榊原一生「アメフト日大部員がコーチ陣の刷新を要求へ。近く声明文で発表」https://www.huffingtonpost.jp/2018/05/28/american-football_a_23445042/

「妙に生々しい、不穏な空気」

それから (新潮文庫)

それから (新潮文庫)

承前*1

柳広司「らしからぬ不穏――夏目漱石『それから』」『図書』(岩波書店)826、2017、pp.40-44


何故『それから』は「あまり評判の良くない小説」(p.40)なのか問題。


生前の漱石をじかに知る弟子たちにとって『それから』は落ち着かない小説なのである。
妙に生々しい、不穏な空気をまとっている。
”らしからぬ不穏”というべきか。
男女の不倫関係を描いているから、ではない*2。友情と恋愛、ついでに言えば青春も、明治期に西洋からもたらされたフィクションであり、漱石自身はそのことを熟知していた。作品を読めばわかるが『それから』において漱石は不倫書いているのではなく、不倫書いている。恋愛と社会規範の相剋を「小説を面白くするための要素」として利用している。
おそらくそれが、生前の漱石を知る弟子たちを”落ち着かなくさせた”原因だろう。
読書体験が人々を魅了する理由の一つに「打ち明け話的特性」がある。文字を目で追い、物語りと一対一で向き合うことで、読者はあたかも「ここだけの話だが……」と著者に耳元で囁かれているような気になる。「君だけに打ち明けるのだが……」と、自分が特権的な立場にいる錯覚を覚えさせる。太宰治はこの特性を最大限利用した小説家だ。
『こころ』の高評価も、このメディア特性に支えられている。
何しろ主人公の「私」が謎めいた「先生」と出会い(徹頭徹尾「先生」らしくないが、呼び名が「先生」)、先生が誰にも漏らさずにいた内面の秘密を、最期に私だけに明かしてくれるのだ。ある種の読書好きにはこたえられない展開だろう。
漱石は、書こうと思えば、いくらでも「打ち明け話的」に書くことができる。
だが、『それから』では小説メディアが持つこの利点を敢えて捨てて書いている。作品は少しも「打ち明け話的」な感じがしない。耳元で囁かれている気がしない。
『こころ』が目の前の「私」に囁きかける小説だとすれば、『それから』は語り掛ける相手をもっと遠くに設定している。「広い世界」の「不特定多数」に向かって言葉が発せられている。
そのせいで『それから』は漱石の弟子たちにとっては落ち着かない小説となった。彼らは、自分たちの頭越しに遠くの見知らぬ誰かに話しかける漱石(=先生)の態度に不安を覚えた。己の拠るべき場所を剥奪されるような不安を覚えた。
彼らが感じた不穏さの正体は、馴れ合いを認めない突き放した漱石の創作態度であり、それが冒頭の「不自然」「作り物」「失敗作」といった評価*3につながったのだと思う。(pp.43-44)
こころ (新潮文庫)

こころ (新潮文庫)

戸棚から出て

勝間和代さん*1が女性と同棲していることを「カミングアウト」したということ。先ず、『BuzzFeed』の記事で知った;


古田大輔*2「同性を愛するということ 勝間和代のカミングアウト」https://www.buzzfeed.com/jp/daisukefuruta/katsuma-masuhara



私は同性を好きだって、わざわざ公表をしないといけないって、本当は変ですよね。私は左利きですって、いちいち公表しないのと一緒で。

でも、LGBTのカミングアウトには勇気がいる。それこそが、偏見や差別が残っている証です。

私も同性を好きになる気持ちに蓋をしてきました。自分の中の無意識の規範概念があったと思います。それを超えると、何が起きるのかわからなかった。

でも、今は規範概念にとらわれて自分らしさを出せていない人に言いたい。同性を好きになってもいいんだよ。そのことに罪悪感を感じる必要はないんだよ。

LGBT当事者に対する反応でよくあるのが「普通じゃなくてもいいじゃない」。だけど、同性愛は異常でもない。普通という概念を広げよう、と言いたいです。

『スポーツ報知』の記事;

勝間和代さん、同性パートナーの存在をカミングアウト「事実を公開することで楽に」
5/28(月) 10:15配信 スポーツ報知



 勝間さんは「プライベートな報告です」のタイトルで記事をアップし、「今日、バズフィードで、私が女性とお付き合いさせていただいていることを公開しました」と報告。この日配信のニュースサイト「バズフィード」の「同性を愛するということ 勝間和代のカミングアウト」と題した記事で、会社経営者の増原裕子さんと交際していることを語っている。

 勝間さんはブログで「同性を好きになることはずっと悩んでいたことですし、また、お付き合いが始まってからも、人にそのことを言えないことを悩んでいましたが、その2つの事実を公開することで、私も楽になるし、周りにも同じような悩みの人のヒントになる可能性があると思ったからです」とカミングアウトを決断した理由を説明した。

 増原さんについては、「私のオタク性も暖かく受け入れてくれている女性です。横で山のようにパソコンを積み上げたり、夜中までAVいじっていても、まったく文句言いません」とつづった。

 勝間さんは大学在学中に学生結婚し、21歳で長女を出産。2度の結婚と離婚を繰り返し、3人の子供がいる。

 増原さんはた元タカラジェンヌの東小雪さんと2015年に渋谷区の同性パートナー証明書の取得第1号になったが、2017年にパートナーを解消していた。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180528-00000116-sph-ent&pos=1


元宝塚女優・東小雪さん、元パートナー女性と勝間和代さんの交際を祝福「お幸せにね」
5/28(月) 14:22配信 スポーツ報知


 経済評論家の勝間和代さん(49)と会社経営者の増原裕子さんの交際が明らかになったことを受け、増原さんの元パートナーで元タカラジェンヌの東小雪さん(33)が28日、自身のツイッターで「心から応援しています!」とメッセージを送った。


 東さんは「素敵なおふたりのあたらしい関係を祝福して、心から応援しています!」とツイート。そして「勝間さんのカミングアウトかっこいい!ひろこさん、お幸せにね」と呼びかけた。

 東さんは増原さんと2015年に渋谷区の同性パートナー証明書の取得第1号になったが、2017年にパートナーを解消。勝間さんがこの日配信のニュースサイト「バズフィード」の記事と自身のブログで増原さんとの交際を公表し、増原さんもインスタグラムで「新しいパートナーの勝間和代さんとおつきあいしていることを、今日オープンにできるようになりました」と報告した。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180528-00000149-sph-ent&pos=3

See also
勝間和代氏カミングアウトに反響広がる 乙武氏「自然体で伝えられる社会に」」https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180528-00000057-dal-ent


勝間さんはバイセクシュアルということになるわけだけど、バイセクシュアルというのは、人間を放置しておけば多分バイセクシュアルになるだろうという意味で、〈自然(本性的)〉なことであるとは思う。

お前は山口犬

毎日新聞』の記事;


<ロシア>ザギトワ選手に秋田犬贈呈 安倍首相も立ち会い
5/26(土) 19:30配信 毎日新聞


 【モスクワ小山由宇】平昌冬季五輪フィギュアスケート女子の金メダリスト、ロシアのアリーナ・ザギトワ選手(16)への秋田犬贈呈式が26日昼(日本時間26日午後)、モスクワのホテルで開かれた。日露首脳会談のためモスクワを訪問中の安倍晋三首相も立ち会った。


 ザギトワ選手は五輪前に新潟で調整していた際、写真で見た秋田犬を気に入り、飼うことを熱望。これを知った秋田犬保存会秋田県大館市)が贈呈を決めた。

 贈呈式で、保存会から生後約3カ月でメスの「MASARU(マサル)」と名付けられた子犬を受け取ったザギトワ選手は「今日を心待ちにしていた。大変うれしい。心から大事にしていきたい」と笑顔をみせた。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180526-00000055-mai-pol

さて、


深海*1「「贈るのは保存会、節度守って」ザギトワ選手への秋田犬贈呈式典に安倍首相が便乗臨席の方針で苦言を呈される」https://buzzap.jp/news/20180518-zagitova-akitaken/


ということもあったようだ。
See
茺田理央「ザギトワが「マサル」と命名、日本から贈られる秋田犬。メスだけど…」https://www.huffingtonpost.jp/2018/03/03/zagitova-akita-dog_a_23376230/

津本陽

朝日新聞』の記事;


直木賞作家・津本陽さん死去 89歳、剣豪小説に新境地
2018年5月28日19時13分


 剣豪小説や「下天(げてん)は夢か」などの長編歴史小説で知られた直木賞作家の津本陽(つもと・よう、本名津本寅吉〈つもと・とらよし〉)さんが26日、誤嚥(ごえん)性肺炎で死去した。89歳だった。葬儀は親族で営む。喪主は妻初子さん。後日、お別れの会を行う。

 和歌山県生まれ。東北大法学部卒。富士正晴島尾敏雄らの同人誌「VIKING」に参加。78年、明治期に滅びゆく紀州の古式捕鯨を描いた「深重(じんじゅう)の海」で直木賞。「明治撃剣会」「薩南示現流」など、剣道3段、抜刀術5段の心得を生かした迫真の殺陣描写で剣豪小説に新境地を開いた。

 80年代後半、初めて手がけた本格的歴史小説「下天は夢か」を日本経済新聞に連載。織田信長の一生を描き、累計200万部をこえるベストセラーになった。95年に「夢のまた夢」で吉川英治文学賞、97年に紫綬褒章、03年に旭日小綬章。05年に旺盛な作家活動に対して菊池寛賞を受賞した。95〜06年、直木賞選考委員をつとめた。
https://www.asahi.com/articles/ASL5X63F6L5XUCVL03G.html

明治撃剣会 (文春文庫)

明治撃剣会 (文春文庫)

紀州に定位した作家というと、中上健次*1津本陽かということになるのだろうけど、遺憾ながら津本陽の作品にはあまり親しんでいない。ただ、生きている間に是非読んでみたいと思う作品は何点かある。因みに、津本氏は熊野ではなく和歌山の城下の生まれ*2
ところで、堺雅人が主演したNHKのドラマ『塚原卜伝』は津本原作ですよね。
塚原卜伝 DVD-BOX

塚原卜伝 DVD-BOX

See also
ハフポスト日本版編集部「直木賞作家、津本陽さん死去 「下天は夢か」など歴史小説の大家」https://www.huffingtonpost.jp/2018/05/28/tsumoto-you_a_23445131/

「命中」?

『ハフィントン・ポスト』(『朝日新聞』)の記事;


2018年05月29日 10時27分 JST | 更新 5時間前
熊本で切りつけ。暴れた刃物の男、警官が発砲した弾で死亡 
逃走した男が追いかけた警察官に向かってきたという。

朝日新聞社提供


熊本で切りつけ 刃物持った男に警官発砲、命中し死亡

 28日午後4時半ごろ、熊本市東区新南部(しんなべ)5丁目で、男性から「刃物で男に顔を切られた」と110番通報があった。熊本県警熊本東署によると、警察官が現場に駆けつけたところ、刃物を持った男がいた。逃走した男が追いかけた警察官に向かってきたため、男性巡査長(40)が警告のうえ、拳銃を発砲した。弾は命中し、男は搬送先の病院でまもなく死亡した。


 県警は、正当な理由なく刃物(約15センチ)を所持していたとして、銃刀法違反の疑いで男を現行犯逮捕。発砲した巡査長も、男に刃物で顔を切りつけられてけが。ほかにも1人がけがを負った。

朝日新聞デジタル 2018年05月28日 20時12分)
https://www.huffingtonpost.jp/2018/05/28/kumamoto-police_a_23445523/

NHKの方が詳しいけれど、細部が微妙に異なっている*1
ところで、「命中」という表現はどうなのか。これだと、最初から仕留めようとしていたことになるけれど、それでいいのか。
長野県でも警官が襲撃されたようだ;

長野・上田市内で男性警察官襲われ負傷 犯人逃走中
2018年5月29日17時50分


 29日午後3時20分ごろ、長野県上田市中央西2丁目の路上で、警ら中の県警上田署の男性警察官(26)が、突然、背後から、後頭部などを棒状のもので複数回殴打された。県警捜査1課によると、容疑者は逃走しており、県警は公務執行妨害容疑で行方を追っている。
https://www.asahi.com/articles/ASL5Y5S7QL5YUOOB00M.html

*1:「男に刃物で切られ 警察官が発砲 男が死亡 熊本」https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180528/k10011456031000.html

ショールームにて

吉川ばんび「山奥の寺で行われたブラック企業の「最悪な新人研修」」http://bunshun.jp/articles/-/7369


吉川さんが体験した「ブラック企業」の「新人研修」の話。


都心から2時間ほど移動して到着した寺は、「寺」というよりも「民家」と言うほうがふさわしい外観でした。ただの民家に、「●●寺」という簡易な看板がかかっているだけ、という印象。「本当に大丈夫なのか?」と思いながらも、ここまで来て「帰ります」ということもできず……。研修の内容は「寺で修行をする」以外に事前に知らされておらず、その場その場で指示に従うような形でした。

修行僧だという少年に案内されて通された広間には、値段が貼ってあるたくさんの仏像が置いてありました。少年は丸刈り頭に真面目そうな顔立ちをしていて、年の頃は中学生くらいでした。その顔に笑顔はまったくなく、どこか大人びていて、淡々と物事を進めている様子が印象的でした。進行役にも慣れているようで、おそらく長くこのお寺で修行しているであろうことがわかりました。

「値段が貼ってあるたくさんの仏像」というのが気になったのだが、この意味はこのテクストの最後の方で明らかになる。ネタバレを恐れず言えば、この「寺」は所謂霊感商法*1ショールームで、「研修」自体も霊感商法の販促活動として行われていた。「ブラック企業」を手玉に取っていたというべきか*2
吉川さんは固有名詞を一切使っていないのだが、業界では有名なところであるらしい。ワイドショーのネタにもなった。