ケイト・ブッシュ/『北京好日』その他

 ケイト・ブッシュThe Red Shoes(1993)以来12年ぶりのアルバムAerialが遂にリリースされる。それもダブル・アルバム。発売日は11月7日。アルバムに先行して、10月24日にシングル"King Of The Mountain"がリリースされる。
 取り敢えず、英国時間8月31日10時に解禁となったというEMIのプレス・リリースを、山本創造さんのKate MLへのメイルからコピーしておく;


KATE BUSH

New Single & Album

EMI Records is proud to announce the release of the brand new studio
album by Kate Bush.

The double album entitled 'Aerial' will be released worldwide on
November 7th (Nov 8th in USA).

The first single 'King Of The Mountain' precedes the album on October
24th.

Both the single and album are produced by Kate Bush.

 また、9月1日付けのBBCの報道はhttp://news.bbc.co.uk/1/low/entertainment/music/4204166.stm


 ところで、8月30日早朝、BSで寧瀛監督『北京好日』(1992)を観た。
 北京市内にある京劇の劇場。その舞台裏が遠回しに写し込まれる。一瞬、これは京劇とその舞台裏についてのドキュメンタリーなのかとも思う。しかし、映画はその劇団の「韓さん」という老職員にフォーカスされる。劇場の守衛を務める韓さんにとって、今夜が職場最後の日。明日は定年退職である。定年になること、労働からの解放は退屈との対決である。することがない。朝起きて、歯を磨いて、ふらふらと散歩をして、ラジオを聴いて、あとは酒を飲むことくらい。再就職も難しそうだ。また、元いた職場に顔を出しても、邪魔者扱い。観ている私たちも韓さんと一緒に退屈と対峙しなければならないのかと思うと、場面は天壇公園へと移る。老人たちが野外で素人京劇を楽しんでいる。韓さんも勿論仲間に加わり、守衛とはいえプロの劇団に勤めていたということで一目置かれもする。これから冬になって、野外は辛かろうということで、公民館を借りようとする。そして、自然発生的な集まりを本格的な、それも遅刻した者は歌うことができないといった厳重な規律を伴ったサークルにする。韓さんというのは〈仕切屋〉なのである。ともかく、地域のイヴェントか何かで公演もこなしたりして、このままハッピー・エンドなのかと思わせるが、そもそもがフォーマルな組織などには馴染めない老人たち、お互いの争いや〈仕切屋〉の韓さんへの反発がだんだんと盛り上がっていって、遂に臨界点へ。韓さんはもうお前らなんか相手にできるかという感じで、自らサークルから飛び出てしまう。公民館が改装されるということで、暫くは公民館も使えなくなり、新装されても引き続き使えるかどうかもわからない。官僚機構との交渉には韓さんが不可欠なのだが、もう後の祭り。映画は仲間たちを窓の外から覗き込む韓さんが戻ろうとするところで終わる。
 多分、ここに出ている俳優たちは殆どが素人なのだが、それぞれに独特のキャラを出している。miki4427jpさんが指摘している「女形役の人のナヨナヨしたおばさんぽっさ」とか。それから、韓さんを結果的には公園に導くことになる、練炭屋で働くちょっと頭が足りなそうな少年のキャラもいい。
 何と言っても、特筆すべきは、オール・ロケのこの映画は1990年代初頭の北京の町並みの記録になっていることだろう。周知のように、1990年代特に後半からは北京の町並みは劇的な変貌を遂げており、伝統的な胡同の多くが再開発の波に呑まれていったからである。この映画が描く北京は永遠に失われてしまったかも知れないのだ。


 さて、今回の総選挙は、ネット選挙が解禁されないままに行われてしまった選挙といえるだろう。あの〈ホリエモン〉までもがオーソドックスな〈ドブ板選挙〉を行っているわけだ。
 宮台真司氏によれば、

昨年の参議院選挙前に、ウェブ選挙運動については解禁される見通しになっていたのが、韓国のウェブ選挙運動によるノ・ムヒョン政権の誕生や与党ウリ党の大躍進に恐れをなした一部の政治家たちの影響力行使によって、これが先送りされてしまった
ということである。
 今回、ネット選挙を巡って、民主党自民党総務省の間に一悶着あることについては、上記の宮台氏の記事の他、


 yeyehill
 「これも重要な選挙の争点。」
 http://d.hatena.ne.jp/yeyehill/20050901/p2
 「総務省の回答はどうなるか。」
 http://d.hatena.ne.jp/yeyehill/20050902/p

 mojimoji
 「ブロガーは公職選挙法違反で捕まりうるか?」
 http://d.hatena.ne.jp/mojimoji/20050902/p3


を参照のこと。
 それから、本田由紀「フリーター・ニートは投票を(2)」は、「現代社会では、個々人の政治システム内での地位と経済システム内での地位は相互に独立して」おり、「経済システム内ではヒエラルキーの頂点と最底辺にそれぞれ位置づけられるような2人の人間も、政治システム、特に選挙においてはいずれも1票として対等に位置づけられる」として、「フリーター」や「ニート」の人々に投票への参加を呼びかけている。曰く、


もちろん、フリーター・ニートを含む若者にとって、現在提示されている選択肢はいずれも満足のゆかないものだろう。政党政治という集団主義そのものへの拒否反応もあるだろう。しかし、それらについては何とか妥協してもらいたい。政治が若者やその中での経済的弱者にこびざるをえなくなるような流れを作り出すためには、まず彼らに「どっこらしょ、仕方ねえな」と動き出してもらうしかないのだ。