「津」から「頭」へ

「根頭神社と根頭神社の森」『CiaO』(新京成電鉄)169、p.8、2023


鎌ケ谷市道野辺にある「根頭神社」*1を巡って。


江戸時代、この一体は幕府の放牧場となり、それまでの歴史資料の多くが不明になってしまったといわれます。そのため、「根頭神社」の創建年代も伝承されている由緒も定かではないのだそう。一つ伝わっているのは、道野辺で代々農家を営む三橋家が一族の氏神様として屋敷に祭っていた根頭神社を、地域の人々もお祭りできるように現在の場所に奉納し、道野辺の鎮守様にしたということ。境内のもので最も古い手水鉢に江戸時代後期の年号が刻まれているので、奉納はその頃と考えられています。
御祭神は、東京都文京区にある「根津神社*2から分霊された根津之大神。「津」から「頭」に変わった理由は諸説ありますが、一説には道野辺の大地の先頭に祭られたので、「頭」の字を当てたのではないかといわれています。
ところで、「津」には「づ」、「頭」には「ズ」というルビが振られている。しかし、「頭」の呉音は正しくは「ヅ」と表記されるべきもの*3。「「津」から「頭」に変わった」という書き方には違和感がある。そもそもの非漢語(大和言葉の)「ヅ」に対する当て字が「「津」から「頭」に変わった」ということなのだから。「ヅ」は取り敢えず不変。