わかりやすかった

NHKサイエンスZERO」取材班「デルタ株に効く? 安全性は? 「新型コロナのmRNAワクチン」…研究の第一人者に聞いてようやくわかった“本当の評価”」https://gendai.ismedia.jp/articles/-/86304



新型コロナのワクチンに対する不安、また悪意や善意の誤解の多くは、それがmRNAワクチン*1という新技術であることに関係している。NHKの『サイエンスZERO』「新型コロナ収束のカギ!mRNAワクチンに迫る」*2、特にゲストの石井健氏の解説は、これまで見聞きした解説の中ではいちばんわかりやすく、納得できるものだった。90%以上というmRNAワクチンの有効性に讃嘆するともに、効きすぎ(で却ってやばいんじゃない?)と思っている人も少なくないのでは? しかし、石井氏によれば、この有効性はmRNAワクチンが抗体をつくるだけではなく、ヘルパーT細胞やキラーT細胞 を活性化させることに依っている。従来型の不活性ワクチンはT細胞をあまり活性化させない。さらに、「副反応」のメカニズムもわかりやすく解説されていた。


ワクチンに対して多くの人が持つ不安が、副反応や長期的な影響などその安全性についてです。mRNAワクチンが体の中でどう働くのかを知っておくことが、ワクチンの正しい理解につながります。

副反応として起きる「接種部の痛み」「発熱」や「だるさ」「頭痛」などは、ワクチンが感染の“まね”をさせることで体に起こす免疫反応だと石井さんはいいます。

「まさにウイルス感染と近いことが起きていて、mRNAワクチンが入ったときに起こる免疫反応が、打ったところの腫れや痛みです。その後、全身にその免疫反応を起こします。ウイルスに感染したら熱が出ますが、それと同じような反応だと思ってください。ただ、ワクチンの場合は免疫反応を起こすだけ、つまり“まね”をするだけで、病気は起こしません」(石井さん)

mRNAワクチンの場合では、この免疫反応がB細胞だけではなくヘルパーT細胞やキラーT細胞でも起きるために、強い副反応が出ると石井さんは考えています。

「mRNAワクチンを接種するとヘルパーT細胞やキラーT細胞がしっかり誘導されるので、本当にウイルスに感染したときの反応のように、痛かったり腫れたり、発熱がよく起きます。一方、T細胞を強く誘導しないインフルエンザワクチンではこうした副反応がほとんど起きません」(石井さん)

ほかの副反応も基本的にはワクチンに入っている物質が問題となって起きるのではなく、ウイルス感染の“まね”をして起きた炎症反応が原因と考えられると石井さんは話します。

「不安の声が上がっている若い男性に起きる『心筋炎』ですが、ワクチン接種後に起きる頻度は、100万回接種に約10例程度と非常にまれです。ワクチンによって心筋炎が起きたのかどうかについても検討が続いているところです。

ただ、理論的に体の中で炎症は起きていますので、心筋に炎症が起きて病気になるということは100%否定できない状況です。もともと心筋炎のリスクがある方やワクチンを打った後に心臓が痛くなったなどの場合は気を付けたほうがいいと考えています」(石井さん)

自分のDNAが書き換えられてしまうのではないかという不安に対して;

ワクチンのmRNAが自分の体のDNAに組み込まれてしまい遺伝情報が書き換わってしまうのではないかという不安の声もありますが、その心配は要らないと石井さんはいいます。

「私たちの体の中にはいろんなウイルスがいて、ものすごい数のウイルスのRNAとやりとりをしています。ただ、ウイルスが私たちの細胞の中のDNAを書き換えるということが起こらないような免疫システムが進化上できています。だから、遺伝子が書き換わることはないと考えていいのです」(石井さん) 

そもそもmRNAは不安定で、私たちの体の中に入っても長期間残るわけではありません。石井さんによると、mRNAは数日から1週間程度で分解されるため、長く体に残って悪影響を及ぼすことはまずあり得ないとのことです。