先月5月16日付の「自由で闊達な言論・表現空間を創造します」と題した声明*1にて、田中優子法政大学総長*2曰く、
これについて、キャリコネ編集部「法政大学「学問の自由」に関する声明発表「本学の研究者たちに、恫喝や圧力と取れる言動が度重ねて起きている」」*3では、
昨今、専門的知見にもとづき社会的発言をおこなう本学の研究者たちに対する、検証や根拠の提示のない非難や、恫喝や圧力と受け取れる言動が度重ねて起きています。その中には、冷静に事実と向き合って社会を分析し、根拠にもとづいて対応策を吟味すべき立場にある国会議員による言動も含まれます。日本は今、前代未聞の少子高齢化社会に向かっています。誰も経験したことのない変動を迎えるにあたって、専門家としての責任においてデータを集め、分析と検証を経て、積極的にその知見を表明し、世論の深化や社会の問題解決に寄与することは、研究者たるものの責任です。その責任を十全に果たすために、適切な反証なく圧力によって研究者のデータや言論をねじふせるようなことがあれば、断じてそれを許してはなりません。
と記している*7。
声明にある「国会議員による言動」とは、自民党の杉田水脈衆院議員*4や橋本岳衆院議員らを指すと思われる。杉田議員は4月下旬、安倍政権に批判的な立場を取る法政大学の山口二郎教授*5が「6億円弱の科研費を受け取っている」と指摘。山口教授はこれに対し、4月29日の東京新聞で「根拠のない言いがかりには反論しなければならない」「政権に批判的な学者の言論を威圧、抑制することは学問の自由の否定である」と猛反発していた。杉田議員の言う「6億円」は、2002年〜2006年、2007年〜2011年、2012年〜2017年の合計16年間、山口氏を研究代表者とする、異なる研究グループに支払われていたものの合計額だ。これら3つの研究にはのべ40人程度の共同研究者らが参加しているが、杉田議員の主張では、山口教授個人に支給されていたようにも取れる。
橋本議員は、法政大学の上西充子教授が5月4日にヤフー個人に掲載した、裁量労働制を巡る厚労省の不適切データ問題を指摘・検証する記事*6について、自身のフェイスブックで「後付けで噴飯ものもいいところの理屈」などと評していた。
橋本議員はその後、上西教授からの批判を受け、「文中に、自分の主観のみを根拠として特定の方を中傷したり、責任を転嫁していると受け止められる表現があった」と、投稿内容の一部を修正している。
上西教授は5月11日に開いた会見で、橋本議員に対し「国会議員による恫喝だ」「研究者への圧力で、到底認められない」と、抗議の意を示している。
さらに、6月8日付で、明治大学が土屋恵一郎学長*8と10学部の学部長の連名で、「自由な学問と知的活力のある大学へ(学長・学部長声明)」という法政への連帯声明を出している*9;
岡本太郎の登場にちょっと吃驚はした。また、明治の文学部長は合田正人氏なのだということも。
私たちは、田中総長のメッセージを支持いたします。近来、一部国会議員や言論人が、学問の自由と言論表現の自由に対して、公然と介入し否定する発言を行っているのは、憲法を無視しているだけではなく、私たちの日常を支えている、民主主義のモラルを公然と否定するものです。「権利自由」「独立自治」を建学の精神とする本学にとって、この事態は看過できるものではありません。大学にとって批判的精神は常に必要とされるものであり、この批判的精神によって、権力の暴走を阻み、健全な市民社会を支えていくのです。私たちが今の日本を誇ることができるのは、この批判的精神を忘れないからであり、決してその時々の権力の内に「日本」があるわけではないのです。岡本太郎氏は、縄文の文化のうちに、日本を再発見しました。私たちも、奔放で自由な学問と知的活力の中で、日本を再発見しなければなりません。
この知的活力のマグマとなる民主主義のモラルを強く支えるために、田中優子法政大学総長のメッセージを支持するのです。
*1:http://www.hosei.ac.jp/gaiyo/socho/message/180516.html
*2: Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070512/1178902575 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081205/1228412291 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100206/1265435465 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101118/1290096150 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130918/1379462503 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20141015/1413381594 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150203/1422976315 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20161016/1476620302 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170226/1488074467 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170411/1491886304
*3:https://news.careerconnection.jp/?p=54137
*4:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180602/1527964446
*5:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060223/1140686238 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060307/1141693903 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060504/1146764157 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060913/1158169095 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061010/1160499009 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061121/1164082739 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070116/1168966875 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070224/1172330232 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081119/1227023221 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090911/1252693890 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091228/1262021085 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101023/1287803171 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110116/1295155336 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110918/1316350893 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120122/1327252811 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130524/1369371446 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160624/1466786481 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170102/1483336796 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170111/1484108115 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170731/1501477531
*6:「裁量労働制のねつ造された比較データ、バレないための隠蔽プロセスを検証(第1回)」https://news.yahoo.co.jp/byline/uenishimitsuko/20180504-00084767/
*7:See aslo 「風圧はこれから強くなる(9日の日記) (2)」https://plaza.rakuten.co.jp/bluestone998/diary/201806080000/
*8:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060224/1140794823 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070216/1171594717 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070624/1182695677 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090322/1237733396 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100303/1267642055 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170330/1490886243 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170402/1491094281 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170902/1504371851
*9:http://www.meiji.ac.jp/gakucho/info/2018/6t5h7p00000rtv69.html