殺人としての除霊(前橋)

朝日新聞』の記事;


「おはらい」で1歳女児死なせた疑い 母の知人女を逮捕

2017年2月23日11時52分

 前橋市で6年前、当時1歳だった女児に暴行し、死なせたとして、群馬県警は23日、女児の母親の知人で、自称コンサルタント業北爪順子容疑者(63)=前橋市駒形町=を傷害致死の疑いで逮捕し、発表した。北爪容疑者は「あやしているうちに、頭をぶつけているかもしれません」と容疑を否認しているという。北爪容疑者は自宅で「おはらい行為」をしており、母親(43)が通っていた。県警はおはらいと称して暴行があったとみている。

 県警の発表では、亡くなったのは、同市西片貝町3丁目の当時1歳4カ月だった城田麻雛弥(ますみ)ちゃん。北爪容疑者は2011年5月2日午後5時ごろ、自宅で麻雛弥ちゃんを暴行し、4日後、搬送先の病院で死亡させた疑いがある。司法解剖の結果、麻雛弥ちゃんの死因は急性硬膜下血腫だった。頭や背中には複数のあざがあったが、母親は当時、「転びやすい子どもで、転んだ」と話したという。

 捜査1課によると、北爪容疑者は「中島順聖(せいしょう)」の名前で、おはらいなどをしていた。麻雛弥ちゃんは生後間もない頃から、両親に連れられ、北爪容疑者の自宅に通っていたという。頭や背中には複数のあざがあり、日常的に虐待をしていなかったかも調べている。

 麻雛弥ちゃんは、児童相談所や警察で見守りが必要な児童の情報などを共有する「前橋市要保護児童対策地域協議会」で、要保護児童となっていた。県警は「被害者が亡くなったことは重く受け止めている」としている。
http://www.asahi.com/articles/ASK2R2V98K2RUHNB001.html


容疑者「おなかに悪魔が…」と暴行か 前橋の女児死亡

三浦淳

2017年2月24日10時44分

 前橋市で2011年に「おはらい」を受けていた女児が1歳4カ月で亡くなった事件で、傷害致死容疑で逮捕された北爪順子容疑者(63)が、生後4〜5カ月の頃から女児に暴行していた疑いがあることが24日、わかった。当時容疑者宅に通っていた男性が朝日新聞の取材に証言した。群馬県警もこうした情報を把握しており、女児への日常的な暴行について調べている。

 証言したのは、群馬県内の男性(50)。病気がきっかけで8年ほど前に北爪容疑者に傾倒し、事件現場になった容疑者のアパートの部屋に通っていたという。

 男性によると、亡くなった女児が生後100日を迎える10年5月前後に、母親が実家にお祝いに行くことについて北爪容疑者に相談したところ、「あそこには魔物がいる。出されたご飯は食べるな」と母親に命じた。母親が実家で飲食したと知ると「いくらここできれいな体になっても、(女児は)魔物を吸い取る。おなかに悪魔がいる」と女児に暴行を始めたという。

 暴行について男性は「女児を突き飛ばしたり、口に指を突っ込んだりするのは日常茶飯事。何度も目撃した」と証言した。

 男性によると、北爪容疑者は「中島順聖(せいしょう)」と名乗り、信者は100人ほどいた。通う人たちは「お布施」として、和紙のお守りや木札を数千円から数万円で買っていたという。(三浦淳
http://www.asahi.com/articles/ASK2S2VBSK2SUHNB001.html

かなり以前にも書いたけれど、クライアントを引っ叩いて「悪魔」だの悪霊だのを追い出すというのはかなりオーソドックスな仕方ではある*1。きっかけはお食い初めの祝い*2で母親の実家に帰ったことだった。北爪順子=中島順聖は何故「実家」に「魔物がいる」と断定したのか。また、「魔物を吸い取」ったとされる女の子には何か異変があったのだろうか。何か症状を観察して、それに基づいて治療を行うというのは近代医学でも呪術でも変わらない。近代医学では例えば細菌とかウィルスといった原因を推定するのに対して、呪術では「魔物」だの「悪魔」だのといった原因を推定するという違いがあるが。最近の例だと、「1型糖尿病」の小学生を「腹の中に死に神がいる」と〈診断〉し死なせてしまった栃木県下野市の祈祷師*3
さて、上の記事では「信者」という言葉を使っている。呪術には「信者」はいない。呪術師のところに集まるのはユーザー或いは顧客だろう*4。結果が出れば、呪術師とユーザーとの関係は一旦切れる。それは、近代医療の場合でも、病気が治癒したり逆に治療の効果もむなしく死んでしまったりすれば、医者との関係が一旦途切れるのと同じ。そういう結果というかご利益を超えて結びついたとき、「信者」は誕生する。北爪順子=中島順聖がやっかいなのは、既に〈教祖―信者〉関係の域に達していたからだろう。たんなる呪術師とユーザーのレヴェルだったら、悪魔を払い損ねて赤ん坊を死なせちゃったよという悪評が立てば客足が遠のく。「信者」であれば「先生」を守るために(陰謀理論を含む)様々なディフェンスを構築する筈だろう。ただ、上の記事では「信者は100人ほどいた」と過去形が使われている。現在では、既に悪評とかのために北爪順子=中島順聖も商売あがったりになっちゃったということなのだろうか。それとも、証言者たる脱会信者の男性の回想に基づくということで過去形にしているに過ぎず、現況についてはわからないということなのだろうか。