わかっている奴にはわかっっていた?

『朝日』の記事;


匿名ブログで「復興は不要」 経産省官僚、身元ばれ閉鎖


 復興は不要だと正論を言わない政治家は死ねばいい――。2年前、匿名ブログに書き込まれた一文が、ここ数日、インターネット上に広まり、騒ぎになっている。閲覧者らが身元を割り出し、筆者が経済産業省のキャリア男性官僚(51)であることがばれたためだ。事態をつかんだ経産省も「遺憾であり、速やかに対応する」として、処分を検討し始めた。

 この男性は経産省の課長などを務め、今年6月から外郭団体に出向している。復興に関わる部署ではないという。ブログでは匿名だったが、過激な書き込みが目立ち、仕事にかかわる記述から閲覧者らが身元を割り出したとみられる。24日午後から、実名や肩書がネット上にさらされた。

 「復興は不要だ」との書き込みは、2011年9月のもの。被災地が「もともと過疎地」だというのが根拠だ。今年8月には、高齢者に対して「早く死ねよ」などと書き込んだ。同7月には「あましたりまであと3年、がんばろっと」などと、天下りを示唆する内容も記した。
http://www.asahi.com/national/update/0926/TKY201309250648.html

また、『毎日』の記事;

経産キャリア:ブログに暴言、炎上 停職2カ月の懲戒処分

毎日新聞 2013年09月26日 11時29分(最終更新 09月26日 12時26分)


 経済産業省の男性キャリア官僚(51)が匿名ブログに、東日本大震災に関連して「復興は不要だ、と正論を言わない政治家は死ねばいいのに」などと書き込んでいたことがわかった。同省は26日付でこの官僚を停職2カ月の懲戒処分にした。

 問題の書き込みは2011年9月25日付。被災した三陸海岸沿岸は「ほぼ滅んでいる過疎地」で、高齢者が既得権を主張するため復興費用の負担が日本中に回されているという趣旨の書き込みをし、政治は「綺麗ごとばかり」と主張していた。書き込みはネット上で次々と転載され、厳しい批判を浴びていた。

 この官僚は経産省防衛省で課長を歴任し、今年6月末から日本貿易振興機構ジェトロ)に出向。15年のイタリア・ミラノ国際博覧会の日本政府代表も務めていた。ジェトロによると、今月25日に不適切な書き込みをしたことを認め、ジェトロを辞めたという。

 今年6月にも総務省から復興庁に出向して福島県の被災者支援を担当していた参事官が、ツイッターで市民団体や国会議員を「左翼のクソども」などと中傷していたことが表面化。停職30日の懲戒処分を受け、出向元の総務省に異動になった。【松田真】
http://mainichi.jp/select/news/20130926k0000e040194000c.html

『毎日』の記事によれば、既に「処分」されている。役所仕事とは思えぬ迅速な措置! ところで、「処分」はいいんだけれど、「停職2カ月」に値する具体的な罪状は何なのだろうか。いくらお下劣なものであれ、この「男性キャリア官僚」の言論の自由の範囲という意見だって成り立つ。というか、半分以上そう思っているのだが。「男性キャリア官僚」は自らの言論の帰結から自らの blogを閉鎖するということによってとんずらし、経済産業省の方も「停職」「処分」によって「男性キャリア官僚」を世間の目から隔離・保護してしまったといえるのかも知れない。何となく、2008年に起こった〈瀬尾佳美事件〉を思い出す*1。あのときは拙blogまでぼやになったのだが。
さて「匿名ブログ」という表現を『朝日』も『毎日』も使っているのだが、所謂〈増田〉とか2ちゃんねる住人(「名無しさん」)とはわけがちがうだろう。今回人肉捜査によってあっけなく面が割れてしまったわけだが、そもそもわかる奴にはわかるという仕方で書かれていたわけでしょ。この「男性キャリア官僚」の友人とか部下とか上司とかは、そのblogを読んで、あっこいつだ! って気づいていた筈だよ。中には、コメントを書き込んでいた奴もいたかも知れない。何がいいたいのかといえば、この「男性キャリア官僚」の数年間に亙るアレな言動も、或る種のインナー・サークル(最近の流行語では「うちらの世界」?)の中ではずっと生暖かく見守られ・放置されてきた可能性がある。前のパラグラフで「役所仕事とは思えぬ迅速な措置」と書いたのだけれど、その迅速さの動因は、人肉捜査によってインナー・サイクルの内外を分かつ壁が消失してしまったことに気づいたときの慌てふためきだったという可能性もある。
ほかのソースとかも勘案すると、この「男性キャリア官僚」がblogでアレな言動を繰り返していた動機というのはわかりやすい感じがした。つまり、オフィシャルな時間・空間では表出することの適わない攻撃衝動をblogを書くことによって発散していた。もしblogをやっていなければ別の仕方でアクティング・アウトされていた可能性もあるのではないか。
J-CASTニュースによれば、谷亮子*2のことを「豚女」とdisっている*3。これで「小沢信者」を敵に回したのか。でも「復興は不要」に関しては本気で共感している人もけっこういるようだ*4。その前提となっている過疎地切り捨てについては、特に新自由主義にコミットする連中においては、遺憾ながら、暗黙の了解のひとつになっているのかも知れない。だから、そういう連中にとって、「男性キャリア官僚」の罪は、言わなくてもいいことを言っちゃった、機密漏洩の罪ということになるのかも知れないな、などと思ったりもしたのだった。
See also


http://www.logsoku.com/r/livejupiter/1380130794/