チャプター!

安田理央*1「ディス・イズ・ポルノ〜AV誕生30年をふり返って〜」http://sniper.jp/300special_issue/3010sex_expression/2012av30.php


アダルト・ヴィデオ(AV)が誕生して今年で30年。日本AV略史といえる。
ところでVHSになくてDVDにあるもの、それは「チャプター」であった。曰く、


1981年に第1号が誕生して以来25年間、AVは試行錯誤を続けてきた。ドラマ、生撮り、ドキュメント、フェチ、コスプレ……。性器を直接見せることができないが故に、日本のAV制作者たちは、あの手この手で「エロ」を表現するためのアプローチを試してきた。日本のAVは、世界に類を見ないユニークな進化をしたという評価もされている。
しかし、デジタルモザイクによるギリギリ最低限の修正によって、限りなく無修正に近づいた時に、ユーザーが選んだのは、シンプルなハードコアポルノだったというのは皮肉な話だ。
結局のところ、ユーザーが見たいものは、「これ」だったのだ。それが25年かけてAVが追求して来た結論ではないか。
「ドラマ」も「作家性」も削ぎ落として、「オナニーのためのツール」に純化した「シンプルなハードコアポルノ」が実現するための機能的な前提が「チャプター」だったわけだ。
しかし

AVを取り巻く環境は、決して明るいものではない。この原稿では触れなかったが、インターネットの普及は、「エロ」の価値をはっきりと暴落させた。かつてアダルトメディアの主要な顧客であった10代、20代の若者はエロはネットで無料で見るものだという意識が強い。新人AV女優に話を聞くと、ほぼ例外なくAVは携帯電話で見ていると言う。携帯電話で見られるサンプル動画、もしくはラブホテルで見るアダルトチャンネルがAVなのだ。音楽CDもすでにそうなっているというが、若い世代にとってAVのDVDを買うというのは、相当マニアックな行為なのだろう。
その結果、現在のAVの主な購入層は40代以上だ。この高齢化はますます進んでいくだろう。当然先細りになることが予測される。
また日本映画史の問題として、「ロマンポルノ」*2没落の端緒を再確認しておく;

そして1984年、宇宙企画から発売された『ミス本番 裕美子19歳』がユーザーと業界に大きな衝撃を与える。「普通の」可愛らしい女の子が「本番」を見せる。それは多くのユーザーが求めていたものだった。同作品は2万本以上のセールスを記録し、AV業界には「素人」「本番」を売りにした作品が乱立することになった。
また、プロの女優が演技のセックスを見せる成人映画よりも、素人の女の子が本番を見せるAVをユーザーは選択し、成人映画は急速にその勢いを失っていく。成人映画の雄、にっかつが、AVに影響を受け、ビデオ撮影と本番による「ロマンX」路線を始めるなど、その力関係は完全に逆転。それは1988年のロマンポルノ撤退へとつながっていく。