増税 VS 国債?(続き)

承前*1

黒川滋*2「震災復興増税を行わない選択肢はない」http://kurokawashigeru.air-nifty.com/blog/2011/04/417-c146.html


所謂「震災復興財源」を巡って。
曰く、


論者の選択肢は大きく分けて
1子ども手当や農業への所得保障の減額+減額された増税
2フル増税
3フル国債発行
の3つになる。
このうちフル増税の選択肢について、景気や弱者への配慮などと言っている政党があるが、他の選択肢が景気や弱者への配慮になるのか疑問である。すくなくとも1と2を比較するなら、2の方が経済的弱者には優しい結果になる。なぜなら、フル増税は負担は(所得税増税なら)収入や(消費税増税なら)支出に比例していくが、子ども手当の召し上げは貧困層から人頭税的に給付を取り上げることになるからだ。このあたり、子ども手当民主党政権を滅ぼす政策的シンボルとして攻撃している自民党公明党は少し冷静に議論した方がいい。今の子ども手当の水準は、公明党が要求していた児童手当の拡大の内容とさほど変わらない。
2と3の比較はやや難しいし神学論争になりがちだが、私は、利払いの問題から、3の方がリスクは高いと思う*3
1よりも2の方がましであることはわかった。ただ、「フル国債発行」のリスクが黒川氏が見積もるほど高いのかどうかはわからない。なお、黒川氏は消費税第一主義は採っていない;

増税の中身が消費税なのか所得税なのか法人税減税の返上なのか(もちろん相続税増税や嗜好性の強い高速道路無料化の廃止もあるが桁が一桁少ない)は議論の しどころ。それでどのような選択肢になるかは政治のかけひきにお任せしたい。ただしその際、消費税=弱い者いじめ、という1980年代の社会構造に形成さ れた先入観は一掃して議論を進めてもらいたい。
同じ黒川氏の「菅首相が退陣すれば、というのは政界再編青い鳥だ」*4からC&P;

私は今回の震災の規模や被害の大きさから、菅政権が良くやっているとは言わないまでも、引きずりおろすまでの問題を抱えているとは思わない。もう少 し事態が安定的に推移するまで、次の首相を選ぶというようなごたごたをやるべきではない。少なくとも「じゃ誰?」となって、思い浮かぶ顔は、この事態の処 理について菅氏と良くて五十歩百歩の人しかいない。とにかく原発の処理がもう少し軌道に乗り、復興が動き始めるまで、首相を変えるのはリスキーである。
「リベラル派(という決めつけ)=軟弱=危機管理ができない」という批判は、阪神大震災のときに村山首相になげつけられたが、当時、村山首相を実務 で支えた石原官房副長官や後藤田氏の回顧を読む限り、事実はそうした問題ではなく、自民党の首相でも躊躇をするような大きな決断をいくつもしており、危機 において本人がぐらついてなければ、危機において選択肢は限られており、おおよそ同じような結論に至るものではないかと思う。
危機はタカ派の政治家でなければダメだというとらえ方はきわめて下品な政局談義の域を出ない。
もし、谷垣氏がやっていたら、石原伸晃氏がやっていたら、山本一太氏がやっていたら、安倍晋三がやっていたら、小沢一郎氏がやっていたら、鳩山由紀夫氏がやっていたら、と考えても、いずれの選択肢も多少の一長一短、政策判断の結果はほとんど同じだったと思う。特に原子力発電の事故の処理については、 誰もが経験していないことだけに、事態の後追いになるのは誰しも避けられない。問われる資質は、情報の公開性があるのか、被害の拡大に手遅れになるような ことをしてしまわないか、ということで、その点については、情報公開という点では小沢氏では課題があり、判断の遅れや迷走については安倍氏、鳩山氏であれ ば問題が起きていた可能性は高い。
そういえば、村山政権の時は震災に加えて、〈オウム真理教〉という難題もあったよ。