大野左紀子「今でもクロサワ? 今どきクロサワ?」http://d.hatena.ne.jp/ohnosakiko/20101121/1290345237
今年は黒澤明生誕100年なのであった。
ただ、1980年代的シネフィルの感覚においては、小津安二郎と溝口健二は(勿論山中貞雄も)OKだったけれど、黒澤明はNG! といったところがあったと思う。下手に黒澤について語ったりすると、村八分にされる可能性もあった。
さて、
これには略全面的に同感。『用心棒』を追加されているけれど、俺としては是非エノケン主演の怪作『虎の尾を踏む男達』も付け加えていただきたいものだ。かなり昔に某知人と、黒澤はやはり通俗娯楽物、とりわけちゃんばらに限る、「ヒューマニズム」だの何だのといい始めると重くなってつまらなくなると話していたことを思い出した。
黒澤映画はいい意味でも悪い意味でも疲れる。映画作家なら黒澤作品を何度観ても発見があるのかもしれないが、気楽な観客である私からすると、『わが青春に悔なし』『白痴』『生きる』『酔いどれ天使』『赤ひげ』などの、ドストエフスキー+ベートーベン+炎の人ゴッホみたいな、むせ返るようなヒューマニズムはちょっと苦手。どこまでも人間の<善>を信じるというか人道主義的というか、作品の根底を流れるあまりの純粋さ真っすぐさに照れ臭くなってしまう。私汚れてますごめんなさい‥‥という気になる。名作には違いなかろうし確かに感動的ではあるのだが、2010年の今観てどうかというと微妙なところ。そんなふうに感じて「黒澤明なんてもう古いよな」と言いたい人もいると思う。
個人的に見直して飽きない作品は、『羅生門』『七人の侍』『蜘蛛巣城』。この三つはネ申だ。私が語ることなど何もない。その次が『隠し砦の三悪人』『天国と地獄』『悪い奴ほどよく眠る』。あくまで個人的には、ですけど。
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「馬」といえば、『影武者』のオチ。人間(女)は騙せても馬は騙せなかった! たしか、蓮實重彦は『影武者』を評して、要するに動物映画だと言っていたような気がする。
黒澤映画では、「雨」と「馬」だ。数えてみたことはないが、実にしばしば雨が降る。黒澤明ほど雨を降らせる映画作家はいないんじゃないかと思う。それもシトシトではなく土砂降りの雨。主人公を打ちのめすがごとくザアザア降るわ降るわ‥‥。そして、丘や山道を、馬が駆けてくる。地面に叩き付ける雨、泥を跳ね飛ばして疾走する駿馬。西部劇だと雨が降らないから砂塵を巻き上げて走る馬とか馬車、ということになるのだろうが、日本だからやはり泥を跳ね飛ばしてくれなくては。そういうシーンを観ているだけで、私は気分が盛り上がります。
もちろんどの作品も、メッセージは非常に明快に力強く伝わってくる。でも何度も観ているとどういうものか、いつまでも妙に心に残るのは雨と馬なのだ。不思議。
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なお、黒澤明については、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060601/1149153721 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061118/1163814040 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080706/1215286712 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080807/1218076507 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081013/1223874679 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090609/1244521269 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091123/1258950633 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100305/1267762277 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100618/1276859625で言及している。