『2008102020091112..8:35…』


金曜日は東画廊*1にて劉任『2008102020091112..8:35…』のオープニング。
1983年上海生まれの劉任は2007年に上海大学を卒業したばかりの新鋭。『2008102020091112..8:35…』を2つの言葉で言い表せば、英単語と卵の殻。先ず、びっしりと隙間なく英単語が書き込まれた英語のノートの断片が展示される。さらに、卵の殻に書き込まれた英単語。展示されるのは、英単語と卵の殻をモティーフにしたインスタレーションとドローイング。最初は英語を習うということに対するコメンタリー、現代教育に対する批判に関心があったようだが、英単語の言語記号とヴィジュアルな模様としての二重の性格といったメタ記号論的考察に関心がシフトしているようだ。さて、卵の殻。卵と言えば、村上春樹イェルサレム演説*2を思い出す。この場合、卵とは自己、劉任で、そこに書き込まれた英単語は自己が被った(英語)教育という暴力の痕跡ということができるだろう。しかし、他方、言語論的にいえば、世界のそもそも脆弱(fragile)である存在者たちを意味世界に繋ぎ止め、堅牢さを与えているのは(英単語も含む)言語記号であるともいえる。そういえば、森常治『日本人=<殻なし卵>の自我像』という本もあったな。