左翼ではさらさらなく

承前*1

http://d.hatena.ne.jp/FUKAMACHI/20081123


深町さんはあれは右翼じゃないと言っているが、左翼では尚更ないなと思った。日本の左翼の暴力というのは基本的には〈人〉ではなく〈物〉に対する暴力で、対人的な暴力が殺害という仕方で発動されるのは〈内ゲバ〉の場合にほぼ限られるといっていいだろう。だから、左翼だったら寧ろ自動車を燃やしたりする方を好む筈だ。また、官僚というのは(政治家と違って)どんなに高官であっても無名の人に止まることが多いので、テロの目的である宣伝効果が大きいともいえない。だから、もしやるとしても、正当化のためにも機関紙とかでそのターゲットが如何に極悪非道な反革命分子なのかが綿々と書き綴られるだろう。しかし、〈人〉に対するテロは基本的には日本の左翼の習慣ではない。
さて、ローリー・アンダーソンじゃなくてベネディクト・アンダーソンは、19世紀のテロリストについて、言っている;


アナーキストの「テロリズム」についての最も重要な特徴は、「行為による宣伝」というスローガンからもうかがうことができます。それを実行する者、すなわち暗殺者は、隠れたり、逃げたりすることがめったにありませんでした。そのためほとんど全員が、あっというまに逮捕され、裁判にかけられ、そして処刑されました。かれらはある意味、最初の「自爆テロリスト」と呼びうるのではないかと思います。かれらは、勇気と威厳をもって、自らをコントロールしました。アナーキストではない多くの人たちですら、かれらの勇気と自己犠牲には、敬意を表さずにはいられなかったのです。(「アジアの初期ナショナリズムのグローバルな基盤」in 梅森直之編『ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る』、p.95)
安易な〈テロテロ〉言説は〈歴史〉に対しても失礼な振る舞いであろう。
ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る (光文社新書)

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