「を」と「お」


 30年以上前、入社した出版社で読み合わせ校正をした時のことを思い出した。これは校正の一種で、一人がゲラを読みもう一人が原稿を見ていて誤字脱字をチェックする方法だ。埼玉出身の女子社員と読み合わせをしたのだが、彼女が「種お買う」と読んでいるように聞こえるので、「を」はなんて発音する? と聞いたら「お」だという。他に東京出身の女性がいたので確かめると同じだった。東京あたりでは「を」を「お」と発音するのかと驚いたのだった。
http://d.hatena.ne.jp/mmpolo/20070520/1179609019
日本語において「を」と「お」の区別は既に平安末頃には崩れていたということを読んだことがあるが、未だに「を」と「お」の発音上の区別残している方言があったことには軽い驚き。どの地方の方なのだろうか。既に「を」というのはwoという発音を表すものではなく、助詞をマークする記号であるという了解は全国民的なものとなっていると思っていたのだ。
年配の方で、k/kw、g/gwの区別をする方はけっこういたが、これは世代的なものよりも漢文の教養の有無によるものか。また、仮名遣いで難しいのは所謂〈四つ字〉、じ/ぢ、ず/づなのだろうけど、福岡県の一部では現在でもこれら〈四つ字〉の発音上の区別が残っていると聞いたことがある。