『黒衣の花嫁』

NHKのBS2で、フランソワ・トリュフォーの『黒衣の花嫁(La Mariee Etait En Noir)』を観る。
コーネル・ウーリッチ(ウィリアム・アイリッシュ)の原作。
ジャンヌ・モローが或る決意を固めて、家を出るところから始まる。結婚式のちょうどその時に悪戯のために殺された夫の敵を討つために。ジャンヌ・モローは終始圧倒的な存在感を見せる。ロングもクローズも自由自在なラウル・タクールのカメラ・ワークとともに、全編はタイトにリズミカルであり、だれることがない。ラウル・タクールの映像で、特に観るべきは、死ぬ寸前の男たちの悔悟と恐怖の表情。
NYTのRenata Adlerさん曰く、"The movie is technically a suspense and horror film?a tribute to Alfred Hitchcock, with whom Truffaut did a fascinating book of interviews last year?in which Jeanne Moreau murders a number of gentlemen. But Truffaut is such a poetic filmmaker that the film turns around and becomes, not at all Hitchcockian, but a gentle comedy and one of the few plausible and strange love stories in a long time."*1 ラヴ・ストーリーとして観れば、これは〈不在の恋人〉を恋うる話であり、或る意味でラヴ・ストーリーの極限ともいえる。また、〈一途な女〉ということでトリュフォーの後のフィルモグラフィを辿れば、例えば『アデルの恋の物語』のイザベル・アジャーニが思い浮かぶ。ところで、http://homepage2.nifty.com/e-tedukuri/La%20Mariee%20Etait%20En%20Noir.html では、「フランス版」の『五辧の椿』だと指摘されているが、思わず納得*2。さらに、http://homepage2.nifty.com/JYOKOTE/cinema/043.htmトリュフォーの「足フェチ」を指摘*3
なお、この映画で重要なのは、或る意味ベタであるかも知れない*4。しかし、音楽担当者については失念。

黒衣の花嫁 [VHS]

黒衣の花嫁 [VHS]

*1:http://movies2.nytimes.com/mem/movies/review.html?_r=1&title1=THE%20BRIDE%20WORE%20BLACK%20%28MOVIE%29&title2=&reviewer=Renata%20Adler&pdate=&v_id=7089&pagewanted=print

*2:このテクストはかなりネタばれなところがあるので、要注意。

*3:Cf. http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20050711

*4:何しろ、「結婚行進曲」のヴァリエーションですから。