長崎市長

先ずは『西日本新聞』の記事;


平和の街 また凶弾 長崎市長撃たれる 支持者目前「パーン」 背後数発、血だまり

4月18日10時6分配信 西日本新聞
 「パン、パーン」。選挙遊説を終えた伊藤一長長崎市長(61)の背後から乾いた銃声が響いた。「市長が撃たれた」「早く捕まえて」。悲鳴と怒号が上がる中、うつぶせに倒れたまま動かぬ市長。選挙戦真っただ中の長崎市の繁華街は騒然となった。選挙期間中の首長を狙った前代未聞の凶弾。1990年に天皇の戦争責任発言で当時の本島等市長が撃たれた悪夢がよみがえった。 

 乾いた音をはっきりと聞いた。長崎市大黒町の伊藤一長氏の選挙事務所。午後7時50分ごろ、事務所で市長選の取材のため待っていた記者たちに事務所スタッフの女性が「市長が帰りました」と告げた瞬間だった。パン、パーンと、強く乾いた音が2、3回続いた。続けて大きな悲鳴が聞こえた。

 慌てて事務所の外に出た。玄関には火薬の強いにおいが立ち込めていた。伊藤市長は頭を事務所側に向け、うつぶせになって倒れていた。脇の間から次第に広がる血だまり。最初は頭をわずかに動かしていたが、その後ぴくりとも動かなくなった。

 事務所から10メートルほど離れた横断歩道には、何人もの人だかりができていた。男が事務所スタッフや通行人らに手や足をつかまれていた。男の足元には「早く捕まえて」と泣き叫ぶ女性がいた。後から人だかりに加わった制服警官の手には黒光りする拳銃が見えた。

 伊藤市長は10分後に到着した救急車に乗せられたが、両手を折るようにして胸の上に置いたまま、周囲の声にまったく反応を示さなかった。 (長崎総局・前田絵)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070418-00000003-nnp-l42


重体の長崎市長が死亡 長崎市銃撃事件

4月18日10時6分配信 西日本新聞
 長崎市の選挙事務所前で17日夜、拳銃で撃たれ、重体となっていた伊藤一長長崎市長(61)が18日午前2時28分、搬送先の長崎大病院で死亡した。死因は銃創による大量出血。長崎県警は、殺人未遂の現行犯として逮捕した指定暴力団山口組系組幹部、城尾哲弥容疑者(59)を殺人容疑に切り替えて動機などを詳しく調べる。

 戦後、襲撃により政治家が死亡したのは5人目。長崎市では1990年1月にも当時の本島等市長が市役所玄関前で右翼幹部に銃撃され、重傷を負っている。

 伊藤市長は17日午後8時前、市長選の遊説を終え、JR長崎駅に近い選挙事務所に戻ろうとしたところ、城尾容疑者に銃撃された。背中に2発の銃弾を受け、心肺停止状態で同病院に搬送され、緊急手術で人工心肺装置を付けたが、意識不明の状態が続いていた。

 伊藤市長は1975年に長崎市議に初当選し、同県議を経て95年5月に長崎市長に就任した。22日投開票の同市長選に4期目を目指して立候補していた。

◆伊藤 一長氏(いとう・いっちょう)
早大政経学部卒。1975年に長崎市議に初当選。長崎県議を経て、95年5月に長崎市長に就任し、3期目。2004年から九州市長会会長。長崎市長の4選を目指すとともに、次期の全国市長会会長選への立候補も表明していた。長崎市出身。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070418-00000001-nnp-l42

また、加藤紘一氏のコメント;

暴力通る社会を憂慮=長崎市長銃撃で自民・加藤氏

4月18日13時1分配信 時事通信
 自民党加藤紘一元幹事長は18日午前、衆院議員会館で記者団に対し、長崎市伊藤一長市長銃撃事件について「許せない気持ちでいっぱいだ。暴力を持っている人の言うことだけが通じる社会は暗い社会だ。みんなで直していかなければならない」と厳しく非難した。
 自身も右翼団体の男に自宅兼事務所を放火された経験を持つ加藤氏は「言論とテロというテーマよりも、社会で自分の思うようにしたい、ならなかったら銃を撃つという『キレる大人』みたいな現象に思える」と指摘。政界への影響に関しては「行動、発言が目立たないことがいいことだという雰囲気になってしまう。その流れがここ2、3年強くなった気がする」と語った。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070418-00000094-jij-pol

今のところ、本島等元市長がテロられたときのような政治的な背景は浮かび上がってはいないようだ。『長崎新聞』の

犯人像、市道事故で市長に恨み? 過去に告訴市役所に「責任取れ」

 城尾哲彌容疑者は、数年前、市道工事現場で自動車事故を起こして同市とトラブルとなり、伊藤市長を長崎地検に告訴したことがあった。城尾容疑者を知る複数の関係者は「市長への逆恨みか」「殺人未遂の動機になるほどの深刻な対立ではなかった」と話した。

 市道のトラブルで、城尾容疑者の相談を受けた同市の松尾千秋弁護士などによると、同市弥生町の市道工事現場で、ガードマンが城尾容疑者が乗っていた車を制止した際、車が穴に落ちて破損したという。城尾容疑者は何度も市役所に「責任を取れ」などと抗議。伊藤市長を文書偽造容疑で長崎地検に告訴したが不起訴処分となっている。

 松尾弁護士は「死刑も想定される事件。トラブルと言っても命を懸けるほど深刻な対立ではなかったはず。過去のことにいつまでもこだわるなとアドバイスをし、『そうします』と話していたので解決したと思っていた」と話した。

 城尾容疑者は一九八九年六月、本島等・元長崎市長への恐喝未遂事件で逮捕され、実刑判決を受けた前歴もある。

 城尾容疑者を知る市民は「頭が良く、いわゆる知能暴力団という印象だった」。別の知人は「小さなことで因縁をつけて金を脅し取ろうとし、思いを果たせないと逆恨みするタイプ。最近は精神的にも金銭的にも追い込まれていた様子だった」と話した。
http://www.nagasaki-np.co.jp/kiji/20070418/15.shtml

という記事を読むと、所謂ゆすり・たかりが拗れたということなのか。しかし、ゆすり・たかりというのは暴力団にとってはあくまでもビジネスの筈。殺してしまっては金も取れないではないか。従って、今回の犯行はプロにあるまじき軽率な振る舞いであるとも見える。三下じゃないんだから。また、そのように見えるということに何か裏があるのかも知れない。