『かもめ食堂』

シネスイッチ銀座荻上直子監督の『かもめ食堂』を観る。日本映画を映画館で観るのは久しぶり。また、荻上さんの映画を観るのはこれが初めて。
フィンランドヘルシンキにあるサチエ(小林聡美)が営む「かもめ食堂」に居着いてしまったミドリ(片桐はいり)とマサコ(もたいまさこ)という2人の日本人女性、食堂の〈常連〉である日本おたくのトンミ(ヤルッコ・ニエミ)その他の人々の織りなす日々を描く。サチエが何故ヘルシンキまでやって来て食堂をやっているのかはわからない。ただ、淀みないフィンランド語を話す。ミドリとマサコがヘルシンキにやって来た理由も曖昧なのだが、2人がこれまで自分に合った居場所をなかなか見つけにくかった人たちだということは想像がつく。映画の中では特別な何かが起こるわけではない(マサコの荷物が空港で何か月も行方不明になるというのは尋常ではないことですね)。殺人も起こらないし、恋愛もセックスも起こらない(ただ、酔っぱらって倒れてしまう人、店に忍び込む人は出てくる)。ただ、粛々と珈琲が淹れられ、料理が作られ、給仕され、飲まれ・食される。そのような日々。〈終わりなき日常〉といっていいのか。ただ、それが登場人物たちにとって離れがたい魅力を持っていることはたしかだろう。マサコは荷物を取り返して、日本に帰ろうとするが、荷物の中身が黄金の茸に変わってしまっていることに気づく。さらに、誰か知らない人から猫を預かってしまったために、日本には帰らなく(帰れなく)なる。これは、この場の人をそこに踏みとどまらせる力。映画はこの幸福な日々がいつか終わりがあるのではないかというちょっとした不安を喚起しつつ、終わる。とにかく、シンプルではあるが心地よい、まさに〈北欧デザイン〉の如き映画であった。ところで、映画は冬が始まる前に終わるが、フィンランドの冬は厳しそう。
ところで、『過去のない男』のマルック・ペルトラの存在感は凄い。
映画とは直接関係ないのだが、amuiさんという方曰く、


主演が小林聡美片桐はいりもたいまさことあるのを見た瞬間、思い出したのは「やっぱり猫が好き」。作品中も「猫」の匂いがするなぁと思っていたら、この監督さん今年の4月にフジテレビで「やっぱり猫が好き2005」という番組を撮っていた!
実は『やっぱり猫が好き』って、全然知らないんだ(くしゅん)。
当日は〈レディース・デイ〉とかで、女性を中心に凄い観客動員で、上映40分前に並んで、既に立ち見。そのせいか、映画館の作法を知らない客も多い。こら婆、上映中にぺちゃくちゃ喋るんじゃねぇ!と叫ぼうとして、唾とともにごっくり飲み込んだ。