機械的であること

茂木健一郎氏が


海の中に何億と産出され、拡散していくサンゴの卵のうちごく少数のものだけが着生する過程は命の儚さと底力を感じさせて美しい。一方、多くの人の貴重な時間を奪って不正・不法な利益を得ようとするスパムはただただ醜く・不条理なだけである。そこにあるのは無意味な機械的ロジックの野放図な適用であり、現代における「人間」というものを深いところで崩壊させかねない、根深い問題を突きつけている(「人間らしさの再定義」『青春と読書』356、p.44)。
と書いている。
「無意味な機械的ロジックの野放図な適用」の問題を指摘したのはアレントであっただろう。アイヒマンの「機械的ロジック」を目の当たりにしたことは、アレントが遺作Life of Mindに取り組む重要な動機であったことは間違いない。また、決定不能性の試練を通過しないような判断は判断であるに値しないという(特に〈正義論的転回〉以降の)デリダの思考。そうしたことどもを連想する。
機械的ロジックの野放図な適用」はスパマーだけの問題ではない。但し、「スパム」が一方では全体主義の問題に通じ、茂木氏によれば「意識」や「言語」の発生にも根を持っている(p.47)問題の先端(の1つ)に位置していることは間違いない。