「配慮がない」だって

承前*1

山本一郎*2「出産シーンの放映は「産めない女性に配慮がない」のか?」http://bylines.news.yahoo.co.jp/yamamotoichiro/20150705-00047250/


長男、笑福君を出産した大島美幸が「子供を産む瞬間の自身の顔を撮影するため、CCDカメラ付きのヘルメットを被って出産に臨んだ」こと*3を非難する声がけっこうあるようだ。そのバッシングの中には、「産みたくても子供を産めない多くの女性に対して何も配慮がない」というのがあるという*4
それに対して、山本氏曰く、


馬鹿なんじゃないの。

出産シーンの放映をやることが不謹慎だ、配慮がないとするならば、子供番組も大家族ネタも子供のいない家庭に対する配慮がないことになりますね。もちろん、いろんな立場の人が視聴者にいることは間違いないでしょう。そういうすべての人たちが満足するようなコンテンツではないのは分かります。しかしながら、ある日常的な問題でコンプレックスを抱えている人が、それを刺激する一般的なことで苦痛だから配慮しろというのは筋違いです。薄毛に悩んでいる人が、剛毛の出演者を見て「配慮しろ」ということほど物悲しいものはありません。

おそらくは、感情面で「嫌だ」「見たくない」となるのでしょう、それは分かります。ただ、それを「配慮がない」「不謹慎だ」と展開させて、自分の感情が世間一般からすると正論・正義であるかのように衣替えしてしまうのは如何なものかと思うわけですよ。これが、単純に「子供が産めない女性に価値はない」とテレビ局やキャストが伝えたくて出てきた映像ならともかく、単純に出産の感動を視聴者と分かち合う企画だったからに過ぎないでしょうから、もうちょっと穏便にならないものなのでしょうか。

イケメンや美女を登場させれば醜男や醜女に「対して配慮がない」ことになるし、セレブのお宅拝見は貧乏人に「対して配慮がない」。そんなものに「配慮」する必要があるのかどうか。勿論、醜男や醜女や貧乏人に徹底的にフォーカスして、徹底的に当て擦ったりdisったりするというなら、そりゃあ問題は起きるだろうけど*5。当然、「産めない女性」が石女として差別されるということは許されないが、柳沢伯夫のような露骨な差別発言*6ではなくて、出産の中継がそのような意味で問題になるのかわからないのだ。また、そういうバッシングの主体は、女性、それも「産めない女性」なのだろうか。男性を中心とした女性の内面の捏造という可能性は高いのではないかと思っている。かつて、宮崎勤*7が「今田勇子」を名乗り、「子供を産むことができない」女のルサンティマンめいたことを語り*8、世間はまんまと「今田勇子」という女性の存在を信じ込んでしまったということを想起しよう。日本社会で共有されていた差別的なステレオタイプを摸倣してみせることができる程には、宮崎勤も世間擦れしていたということだ。
勿論単純に出産シーンなんてみたくないという人もいるのだろう。それに対してきもいといったり、そんな番組は視ないと宣言したりすることは自由なのだろうけど、問題は(やはり山本氏が指摘しているように)「自分の感情が世間一般からすると正論・正義であるかのように衣替えしてしまう」ということだろう。

*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150625/1435242695

*2:http://kirik.tea-nifty.com/ See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090625/1245896110 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091204/1259898706 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100505/1273034923 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130219/1361281297 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130617/1371427964 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140809/1407591494 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150424/1429891088 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150615/1434390279 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150619/1434649851

*3:「「出産まで芸にするのは気持ち悪い」 森三中大島の出産シーンテレビ放映に疑問の声」http://www.j-cast.com/2015/06/30239091.html?p=all

*4:村岡タクミ「「産めない女性に対して配慮がない」森三中・大島の出産シーン放映に非難殺到」http://netallica.yahoo.co.jp/news/20150702-00010007-asagei ところで、大島を支持している人と非難している人の割合とか、或いは「産めない女性に対して配慮がない」というバッシングがどの程度共感されているのかということはわからないのだ。『アサヒ芸能』の記事のタイトルにはなっているものの、本文では様々なバッシングのひとつとして挙げられているにすぎない。

*5:というか、それ以前に、そんな蛮勇を持ったTV屋さんは多分いないだろう。

*6:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070128/1170005200 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070130/1170130210 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070131/1170208822 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070201/1170333898 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070205/1170643322 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070206/1170727144 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070213/1171336683 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070224/1172283619 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091103/1257248906 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110802/1312305275 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140104/1388844590 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140622/1403366219

*7:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080617/1213698178 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080622/1214148581 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101015/1287072241 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140723/1406132452 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20141025/1414208459

*8:「今田勇子」名義の犯行声明文は例えばhttp://horror.3.tool.ms/265/

Champagne as World Heritage

明治日本の産業革命遺産*1世界遺産登録は紆余曲折があったものの、ようやく本決まりのようだ。反対するわけでは全然ないけど、「松下村塾」と「産業革命」の間にどんな直接的関係があるのか、依然としてよくわからない。
『毎日』の記事;


世界遺産:「明治日本の産業革命遺産」登録決定 ユネスコ

毎日新聞 2015年07月05日 22時41分(最終更新 07月05日 23時34分)


 ドイツのボンで開催されている国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は5日午後3時(日本時間同10時)から、日本が世界文化遺産に推薦する「明治日本の産業革命遺産」について審議し、登録することを決定した。

 当初、審議は4日に予定されていたが、意見陳述の内容などを巡り日本と韓国の間で調整がつかず、新規案件の審議期間の最終日である5日に延期された。

 韓国は産業革命遺産について「戦時中、朝鮮人が強制徴用された施設がある」として登録に反対していた。6月21日の日韓外相会談で、互いの推薦案件の登録に向け相互協力することで合意していたが、今回、徴用をどう説明するかで日韓間の協議が長引いたとみられる。

 韓国政府は戦時中、産業革命遺産の23施設のうち7施設に朝鮮半島出身者約5万8000人が送られ、働かされたと主張。施設に関して、徴用に言及する形で説明することなどを求めていた。一方、日本は「1850年代から1910年までが遺産の対象年代で、時代が異なる」と反論し、日韓外相会談まで主張は平行線をたどっていた。

 世界遺産委員会は日韓を含む21カ国で構成される。審議は通常、推薦国が説明した後、他の委員国が意見を述べ合う。韓国メディアの報道によると、韓国側が産業革命遺産に対し発言する内容に日本側が反発していた。

 一方今回、韓国が推薦する「百済歴史遺跡地区」は4日に登録が決定した。審議の際、日本代表は全面支持を表明した。

 産業革命遺産は、通称「軍艦島」で知られる「端島(はしま)炭坑」(長崎市)▽薩摩藩が手がけた機械工場や反射炉の遺構で構成する「旧集成館」(鹿児島市)▽幕末に実際に稼働した反射炉で国内で唯一現存する「韮山(にらやま)反射炉」(静岡県伊豆の国市)−−など、日本の近代工業化を支えた炭鉱、製鉄などの23施設で構成される。

 今年5月に世界遺産への登録の可否を調査する諮問機関「国際記念物遺跡会議」(イコモス、本部・パリ)が「登録が適当」とユネスコに勧告した。各国が世界文化遺産登録に推薦できるのは年に1件。今年の日本の推薦を巡っては、内閣官房が「産業革命遺産」を推し、文化庁は「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」(長崎、熊本両県)を主張。2013年9月に菅義偉官房長官が「政治判断」で選んだ。「長崎の教会群」は16年の登録を目指している。【三木陽介、ボン中西啓介


 ◇世界遺産

 ユネスコ世界遺産条約に基づき、文化遺産や自然遺産を人類全体の財産として保護する制度。昨年までに文化遺産779件、自然遺産197件、複合遺産31件の計1007件が登録されている。各国が推薦し、イコモスの勧告を経てユネスコ世界遺産委員会で審議される。普遍的価値や保護管理体制があることが条件。近年は審査が厳しくなり、2014年から文化遺産の推薦は各国1件に限定されている。
http://mainichi.jp/feature/news/20150706k0000m040081000c.html

さて、


Kim Willsher “Unesco grants champagne industry world heritage status” http://www.theguardian.com/world/2015/jul/05/unesco-champagne-world-heritage-united-nations-french


仏蘭西におけるシャンパン関連の施設(葡萄畑、シャトー、セラー等)が世界遺産登録された。上の記事を読んで、ちょっと驚いたのは、記事ではシャンパンの名前の元となっているシャンパーニュ地方*2はあまり言及されないで、ブルゴーニュ*3の話ばかりだということである。


France had double reasons for celebration as its Burgundy vineyards were also listed as world heritage sites.

Unesco said the champagne world heritage status covered “the places sparkling wine was developed using a second fermentation method in the bottle from the beginning of the 17th century until its early industrialisation in the 19th century”.

It mentioned the historic vineyards of Hautvillers*4 – where, local legend has it, the monk Dom Perignon*5 invented the fermentation process that gives champagne its fizz – and the grand Avenue de Champagne in Épernay, the heart of the industry.

In Burgundy, Unesco recognised the uniqueness of the vineyards of the Côte de Nuits and the Côte de Beaune south of the city Dijon which produce some of the finest red wines in the world made from pinot noir and chardonnay grapes.

It listed the Climats, which are precisely delimited vineyard parcels “on the slopes of the Côte de Nuits and the Côte de Beaune” south of the city of Dijon.

“They differ from one another due to specific natural conditions [geology and exposure] as well as vine types and have been shaped by human cultivation. Over time they came to be recognised by the wine they produce,” Unesco said.

It concluded: “The site is an outstanding example of grape cultivation and wine production developed since the high middle ages”.


シャンパン」というよりは「スパークリング・ワイン」一般の発展、さらには中世以降の葡萄の栽培・加工一般の発展にフォーカスしているわけだ。

「恋は焦らず」

It's the Girls

It's the Girls

ベット・ミドラー*1It's the Girls!は1曲目の”Be My Baby”から最後の”It's the Girl”まで、女性コーラス・グループの名曲カヴァーアルバム。というわけで、ブックレットには3倍に増殖したベット・ミドラーがいっぱい。この中でいちばん新しいのは、TLCの”Waterfall”だろうけど、1995年の曲で、もう20年前。因みに、レフト・アイは2002年に自動車事故のために他界している。実は、このアルバムの中で最も気に入っているのは、”You Can't Hurry Love”。オリジナルはシュープリームス。とはいっても、”You Can't Hurry Love”というタイトルからダイアナ・ロスの姿を思い浮かべるのは私よりも上の、団塊に近い世代の人たちで、私前後の世代だと、フィル・コリンズの禿とサングラスを想起するということになる*2。ずっと下の若い世代はどうなのかというのは知らない。ベット・ミドラーの”You Can't Hurry Love”だけど、ブルー=アイド・ソウルにしないで、カントリー風にしてしまったことが凄い。それによって、文字通り”You Can't Hurry Love”という感じの緩さが醸し出されているのだった。

*1:http://bettemidler.com/

*2:絲山秋子の『海の仙人』という小説の中で、”You Can't Hurry Love”が響いているのだが、それはシュープリームスのオリジナルじゃなくてフィル・コリンズによるカヴァーなんじゃないかと推測したことがある。http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091028/1256705010

海の仙人 (新潮文庫)

海の仙人 (新潮文庫)

「西宮回生病院」の死

『朝日』の記事;


火垂るの墓の旧病棟、解体へ 最後の見学会に760人

2015年7月4日20時06分


 野坂昭如さんの自伝的小説「火垂(ほた)るの墓」に登場し、同名のアニメ映画にもその姿をとどめる西宮回生病院(兵庫県西宮市)の事務棟(旧病棟)が、老朽化で解体される。4日、最後の見学会があり、市民ら約760人が訪れた。

 病院玄関を兼ねた事務棟は木造2階建てで、1937年ごろにできた。緩やかな弧を描く車寄せとアーチ型の窓枠が特徴。小説や映画では、神戸空襲で母を亡くした主人公の清太が幼い妹・節子と病院前を通りかかり、よその母娘の再会をうらやむ場面がある。

 95年の阪神大震災で玄関の屋根が落ちたが補修し、今年5月まで使われた。今月中旬に解体工事が始まり、来年夏に5階建て新病棟に生まれ変わるという。
http://www.asahi.com/articles/ASH744VS9H74PIHB00L.html

阪神大震災」を生き延びたのにね。今後は高畑勲のアニメの中のみに生きることになるのか。そういえば、「火垂るの墓*1は小説は読んでいるが、映画の方は未見なのだった。
アメリカひじき・火垂るの墓 (新潮文庫)

アメリカひじき・火垂るの墓 (新潮文庫)

PSA屋上

2015年1月24日。








上海当代藝術博物館*1屋上。

Untitled


2014年12月24日。拉麺商店*1



2014年12月24日。宛平南路の市場*2

2014年12月24日。雪ダルマ@永新坊*3

2014年12月25日。天鑰橋路・零陵路の交差点*4

*1:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150301/1425224018 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150304/1425395425 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150405/1428202947 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150417/1429196644 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150505/1430832210 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150507/1430965454 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150520/ http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150524/1432409057 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150610/1433863759 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150624/1435115623 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150629/1435547927

*2:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150107/1420562781 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150307/1425693093 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150309/1425831424 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150314/1426300148 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150405/1428202947 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150420/1429499344 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150421/1429579567 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150430/1430364624 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150529/1432911212

*3:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20141231/1419991321 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150202/1422897540 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150307/1425693093 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150410/1428638445 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150421/1429638334 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150423/1429807046 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150424/1429848176 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150512/1431433918 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150518/1431944283 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150528/1432784630 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150613/1434164213 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150619/1434641534 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150629/1435547927 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150704/1436004709

*4:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150528/1432784630 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150617/1434466929 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150629/1435547927