一時帰国/社会科学基礎論研究会 

 それにしても、随分と更新をさぼっていた。

 上海では12月4日に、公式に〈冬〉に突入。1日の平均気温が10度を下回る日が5日続いた場合、5日前に遡って、〈冬〉の第1日目とするのだそうだ。今年は12月9日に12月4日から〈冬〉に突入したと決定された*1 。4日から5日にかけての冷え込みは特に厳しく、最低気温は氷点下2度だったということだが、氷点下2度というのは嘘で、実際はマイナス7くらいまでいっていたという噂が広がっていることを、後になって知った。ともかく、5日は風も強く、外に出ても、寒さのため、指や耳が突き刺さるように痛かった。近所の「屈臣氏(Watson’s)」で取り敢えずニットの手袋を買ったのだが、その後は、こちらの身体が寒さに慣れてきたせいかどうかわからないが、とにかく現在のところ、寒さで突き刺さるように痛いということはない。

 さて、今週、正確には明日12日から1週間、日本に一時帰国することになりました。主要な目的はヴィザの更新のためなのだが、まあ、中国では未発売のケイト・ブッシュの新譜を買うためにと、いっておこうか。

 ということで、私も出席することになる社会科学基礎論研究会のお知らせ;


社会科学基礎論研究会
会員・関係者 各位

     2005年度第3回研究会のお知らせ

 本年度第3回研究会として、著者をお招きした合評会を下記のように開催します。
 当研究会の「合評会――著者を招いて」の企画は、今回で13回目になります。
この企画では一貫して、評者に忌憚のないコメントをしていただき、それをもとに
著者・評者・参加者のあいだで学的に真摯な議論が行なわれることをめざして
きました。ぜひ、対象書を通読のうえ、多数ご参加くださいますようお願いいたしま
す。
 なお、通常より1時間遅い、14時からの開始です。ご注意ください。
 みなさまのご参加をお待ちしております。

     記

1.日時:12月17日(土) 14:00〜19:00
2.会場:大正大学巣鴨校舎)2号館3階 231教室
     最寄駅は都営三田線「西巣鴨」、
     2号館は、正門左手の建物です。
3.プログラム
 【合評会――著者を招いて(第13回)】
 対象書:竹中均著『精神分析社会学
       ――二項対立と無限の理論』明石書店 2004
 司会:張江洋直(稚内北星学園大学
     尾形泰伸(武蔵大学・非)
報告:片上平二郎(立教大学大学院)
    浅野智彦東京学芸大学
    水野節夫(法政大学)

 参加費:300円(学生200円)

★著者竹中氏の報告概要を下記の研究会HPに掲載しました。また、評者の概要も
順次掲載する予定です。ぜひご覧ください。
★研究会終了後、懇親会を行ないます。ぜひ、ご予定にお含めください。

☆会員および案内のご希望をお知らせいただいた方に加えて、研究会に参加
されたり、機関誌を購入くださったりした方、世話人ほかが存じあげている方に、
メイルをお送りしました。もし、案内はご不要という方がいらっしゃいましたら、
お手数でもお知らせくださいますようお願いいたします。


事務局
〒170-8470 豊島区西巣鴨3−20−1
大正大学人間学部社会学研究室(井出)気付
e-mail:h_ide@mail.tais.ac.jp
世話人 井出裕久・佐野正彦・張江洋直
HP:http://wwwsoc.nii.ac.jp/ssst/index.html
(送信:事務局 尾形泰伸)

*1:NING Bo, DONG Zhen “Official start to winter” Shanghai Daily 9 December 2005

Lost

 ところで、村井寛志氏*1とは行き違いの連続で、9月に上海で会おうといっていたのに、私の上海行きが遅れたせいで、私が上海に行ったときには、既に村井氏は帰国していた。じゃ、12月にでもと言っていたのだが、今回村井氏が上海に来るのは私が日本にいる間である。

 さて、先月、私たちは夫婦揃って、アメリカのTVドラマLost*2にはまってしまい、そのファースト・シーズンのDVDを一気に視てしまった*3アメリカでは既にセカンド・シーズンのオン・エアが開始されているという。で、こちらとしても、セカンド・シーズンのDVDが出るのを心待ちにしている次第。
 Lostは、言ってしまえば、飛行機が南海の〈無人島〉*4に墜落した、その後のサヴァイヴァル生活を描くというものである。一時流行ったリアリティTVのドラマ版といえるかも知れない。
 で、気づいたことをちょっとメモしておく。
 まず、普通のアメリカのドラマと違って、主な舞台がアメリカ国外(主として、オーストラリア)に設定されていること。〈無人島〉の撮影はハワイで行われたらしいが。そこで気になったのは、オーストラリアの表象である。Down Underという名前の如く、ここではオーストラリアはあらゆる運命の吹き溜まりの地として表象されている。私は全く無知なので、西洋(特に英語圏)におけるオーストラリア表象の歴史の中で、このドラマはどのように位置づけられるのか、識者に是非伺ってみたいものだ。
 登場人物に関して、マルティエスニックな構成を取るというのは、最近のアメリカのドラマでは、PCということからも、当たり前なのだろう。Lostの登場人物で目を引くのは、韓国人カップルとイラク人の存在だろう。韓国人の場合は、ここでは言語の壁=英語が話せないフリという要素が付け加えられているのだが、ここでは亜細亜人表象の問題は取り敢えずスルーしておく*5イラク人のサイードは、イラクの元「共和国防衛隊」*6のメンバーで、1991年の湾岸戦争にも(勿論、アメリカの敵として!)参加したという設定になっている。しかし、サイードはネガティヴなキャラクターではない。登場人物の中でも、最もポジティヴな、すなわちサヴァイヴァル能力が高く、冷静沈着で、常に合理的思考が可能な、人物である。こうしたキャラクターの設定に対して、イラク戦争もまだまだ継続中のアメリカで、どのような反応があるのか、取り敢えず興味津々。
 このドラマの最大の特徴といってもいいのかも知れないが、登場人物たちの過去の回想が大々的にフィーチャーされている。寧ろ、時間としては、〈無人島〉の場面よりも多いんじゃないかしら。それぞれの過去のトラウマを伴ったしがらみによって、〈運命の吹き溜まりの地〉であるオーストラリアに吹き寄せられ、〈無人島〉に墜落することになる件の飛行機(それはアメリカ、ロサンジェルスに回帰する飛行機)に導かれるということである。過去の回想が始まると、〈無人島〉での出来事が中断され、その都度いらついたりもしたのだけど、そうまでして、〈過去〉に拘るのは、勿論、視聴者への目眩まし的戦術だということはあるにせよ、このドラマは〈社会の心理学化〉ということを体現しているのであって、過去の(幼少時まで遡る)トラウマを伴った心的経験こそが現在を決定してしまうというイデオロギーに、少なくともジェンダーとか年齢とかエスニシティとかいった属性はそれぞれ異なる登場人物たちは取り憑かれているということなのだろうか。また、このイデオロギーは、上述の属性の差異を越えて、かなり共感されているということだろうか。

*1:http://d.hatena.ne.jp/murai_hiroshi/

*2:http://abc.go.com/primetime/lost/index.html

*3:それが海賊版かどうかなんて、野暮なことを訊くものではない。

*4:実際にはそうではないのだが。

*5:それにしても、彼の故郷である〈韓国の漁村〉のシーンが出てくるのだけれど、あれは温帯でもかなり北部に属す筈の韓国の海岸ではなく、熱帯の海岸であり、ハワイで撮影したことがみえみえ。

*6:中文字幕ではそうなっていた。日本ではたしか「大統領親衛隊」とか言われていたんじゃなかったっけ。