「根源悪」の体験(河合隼雄)

子どもと悪 (今ここに生きる子ども)

子どもと悪 (今ここに生きる子ども)

河合隼雄*1『子どもと悪』から。


悪が一定の破壊の度合をこえるときは、取り返しがつかないことを、人間は知っていなければならない。そして、そのような可能性を秘めた根源悪は、思いがけないときに、ひょっと顔を出すのだ。そして、後から考えるとも弁解のしようがない状態で、人間はそれに動かされてしまう。このことをよく心得ていると、大切なときに踏み止まることができる。
それを可能にするためには、やはり、子どものときに何らかの深い根源悪を体験し、その怖さを知り、二度とはやらないと決心を固くすることが必要である。筆者は、非常に多くの人がこのような体験をもっているのでないかと思っている。そして、そのときに大人がどのように対処したのかが、その人の人生にとってっも大きな意味を持っているものと思う。(pp.56-57)