1991年の「携帯電話」(孫引き)

安心のファシズム―支配されたがる人びと (岩波新書)

安心のファシズム―支配されたがる人びと (岩波新書)

斎藤貴男*1『安心のファシズム』から1991年1月8日付*2の『東京新聞』の記事を孫引き;


持っていない者のひがみかと言われればそれまでだが、いま巷ですこぶる評判が悪いのが、携帯電話と自動車電話である。なかでも携帯電話の惨状はすさまじい。ある女性雑誌は、「こんな男は大嫌い!」を特集する中で、「携帯デンワを持っている男」を巻頭ページにかかげるほどだ。「ほんとは全然、忙しくないもんだから、持っていても鳴る気配がない。自分でかけるだけでしかもたいした用事じゃないの。”ゴクロウさん”って感じよね」。隣のカットには、「ヒマさえあればケータイデンワで「なんかデンワ入ってない」と聞いている」とまで書かれている(クリーク 一九九一年五月二十日号)。かたや若者向け雑誌も、中年男性をターゲットに非難する。「誰もが心の中で思っていること。情けない! ポケベルオヤジが進化して」と、ダメ押しが並ぶ(週刊プレイボーイ 一九九一年七月三十一日号)。ただし怒っている割には結びがわびしく、「見かけたら、ぜひ指さして”ダッセー!”のサインを送ってあげよう!」。本当は欲しくてたまらないといったところだろう。(Cited in pp.60-61)