マルティメディアに届かず?

日刊SPA!取材班「疑似SEXを体験できる「アダルトVRフェスタ」に潜入! HMD(ヘッドマウントディスプレイ)は何を買うべきか? を考察」http://nikkan-spa.jp/1132383


最近、特にネット上でよく目にするアルファベット2文字の略語というと、AI(人工知能)のほかにはやはりVR(=virtual reality)だろう。1990年代前半、インターネットと前後して、「ヴァーチャル・リアリティ」という言葉が(「マルチメディア」というのとともに)よく登場していたが、(皮肉なことなのかどうかはわからないが)インターネットの普及ととも歩調を合わせるかのように、それほど目立たなくなってしまった*1。ところが、上の記事でも「VR元年」という言葉が出てくるけど、ヴァーチャル・リアリティはVRと略されてメインストリームに回帰してきたわけだ。また、新しい技術をエロが牽引するというのも今回が初めてではあるまい。
かつてのマーシャル・マクルーハン*2らの論とも通じるのだろうけど、上で紹介された最新鋭のVRというのはヴァーチャル・リアリティといっても、五感のうちでも、圧倒的に視覚を媒介としたものだということである。「女性のバストを揉む感触を味わえる」機械もあるようだけど、ぬめりといった性愛に独特のクォリアを有する触覚の再現にまでは至っていないようだ。嗅覚や味覚が未だ組み込まれていないというのはいうまでもない。また、ここで排除された嗅覚や味覚や触覚の方が性愛という(ヴァーチャルではない)リアリティの構成には重要ではあるわけだけど。