或る伝統の隠蔽と衰退

Rupert Wingfield-Hayes “Japan and the whale” http://www.bbc.com/news/world-asia-35397749 *1


日本の捕鯨に対する国際的なバッシングへの或る役人の反論を伝えた、


One Japanese official once said to me: "Japanese people never eat rabbits, but we don't tell British people that they shouldn't". I pointed out that rabbits are not exactly an endangered species.
という短いパラグラフがある。Rupert Wingfield-Hayes氏も「日本人は兎を食べることはない」ということを事実として疑ってはいないようにみえる。
でも、普通のリテラシーを持った日本人なら、この役人の発言が事実と異なることは直ぐにわかる筈だ。兎は四つ足の哺乳類なのに、数えるときには、何故匹ではなく羽という単位を使うのかを、考えてみよ*2 。また、遺憾ながら出典は記されていないものの、Wikipediaに曰く、

日本でも、古来より狩猟対象であり、食用とされてきた。縄文時代貝塚から骨が見つかることはそれを示唆するものであると考えられ、江戸時代徳川将軍家では、正月の三が日にウサギ汁を食べる風習があったという。秋田県の一部地域では「日の丸肉」と呼ばれ、旅館料理として出されることがある。この日の丸肉という名称は、一説によると、明治期に日本で品種改良されて定着した白毛に赤目のウサギが、あたかも日の丸の色彩を具現化したような動物であったことによるともいわれる。(後略)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%B5%E3%82%AE
ここでいう「秋田県の一部地域」というのは大仙市か。Wikipediaの「全国ジャンボうさぎフェスティバル」*3の項に曰く、

ジャンボうさぎは通称であり、正式には「日本白色種の秋田改良種」と呼ばれる。この種は一般的なものでも6 - 7キログラム (以下 kg) に成長するが、そのうち特に7.5 – 10kgに成長する血統を「ジャンボうさぎ」と呼び、大仙市中仙地区のブランドになっている。主に実験用として利用され、伝統料理として食用もされる。1899年(明治32年)頃に岐阜県から大型うさぎを導入したことに始まり、食肉と毛皮が利用されてきた。現在でも、大型化と毛並みの美しさを目指して品種改良と保存が続けられている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%A8%E5%9B%BD%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%9C%E3%81%86%E3%81%95%E3%81%8E%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%90%E3%83%AB
残念ながら、「ジャンボうさぎ」と雖もcontinental giant rabbitには敵わないようだ*4
その一方で、ネットで検索して出てくるのは、フレンチとしての兎料理ばかりで、和食として兎を食わせる店とかは出てこない。その意味で、日本における兎食用の伝統は衰退しており、冒頭に掲げた役人の発言を疑わない日本人も多いのかなと思ってしまう。

おまけ。明治時代の「ウサギバブル」について;


http://namakatu.sakura.ne.jp/ido/ido7.html