或る野次から推測できること

毎日新聞』の記事;


都議会:セクハラやじ 女性議員に「早く結婚しろ」

毎日新聞 2014年06月18日 23時44分(最終更新 06月19日 00時18分)


 東京都議会の本会議で18日、みんなの党会派の塩村文夏(あやか)議員*1(35)が、女性の妊娠・出産を巡る都の支援体制について一般質問をしていた際に、男性の声で「早く結婚しろよ」「子供もいないのに」などのヤジが飛んだ。同会派は、議員席からだったとして「公の場でセクハラ発言を受けた」と反発。発言議員を特定し、注意するよう議会運営委員会に申し入れる。

 塩村氏は議長席前の演壇でヤジを浴び、声を詰まらせる場面もあった。質問終了後、報道陣に「女性の気持ちを代弁していただけに腹が立つし、悲しい」と語った。同会派の両角穣(もろずみみのる)幹事長は「6年後に五輪が開かれる都市の議会でこういう発言が出るのは恥ずかしい」とあきれた様子。一方、議運の吉原修委員長(自民)は「聞いていない」とした上で、「(各)会派の中で品位のない発言をしないよう確認すればいいのでは」と述べるにとどめた。

 塩村氏は昨年6月の都議選で初当選。放送作家として活動し、日本テレビが放送していた人気バラエティー恋のから騒ぎ」に出演していた。【和田浩幸】
http://mainichi.jp/select/news/20140619k0000m040122000c.html

また、

都議会ヤジ:笑った指摘に舛添知事「塩村氏の笑いに笑み」

毎日新聞 2014年06月20日 21時49分(最終更新 06月21日 00時36分)


 ◇首都のトップも「恥ずかしい」

 「恥ずかしい」。20日、首都のトップが苦い表情を浮かべた。東京都議会で18日夜、塩村文夏議員(35)の一般質問の最中に飛んだ女性蔑視のヤジ。自民党野田聖子総務会長は激怒するが、都議会議長は、塩村氏側のヤジを発した議員の処分要求を受理していない。

 ヤジを巡り、東京都の舛添要一知事は20日の定例記者会見で、2020年東京五輪パラリンピックの開催を控えていることを踏まえ、「共生社会を目指すことをスポーツ、文化を通じてやろうと言っているときに、そういう発言が出るのは恥ずかしいし、謹んでもらいたい」と批判。「都議会の良識とルールにのっとって対応されるであろうことを期待する」と自浄を求めた。

 塩村氏にヤジが飛んだ際、舛添氏は答弁のため本会議場の説明員席に座っていた。塩村氏の所属会派の都議からは、ブログで「議場の一部は笑いに包まれ、舛添知事も少し笑っていました。僕は見てましたよ、しっかり」と指摘された。

 舛添氏は「彼女の質問を一言一句落とさないようにチェックしてる。答弁に集中しているから、何があったかは分からない」と述べ、本会議後の報道でヤジの内容を知ったと説明。「笑った」との指摘については、「誰かが面白いことをおっしゃったんで笑われたのかなあと。そして同時に(塩村氏が)笑ったので、私も『何か楽しいことがあったのか』と思って笑みを浮かべた。それだけの話です」と反論した。【竹内良和】
http://mainichi.jp/select/news/20140621k0000m040092000c.html

これを機会に政治家たちのジェンダー絡みの失言が回顧されている;

政治家の不適切な発言:「産む機械」…反省なく繰り返され

毎日新聞 2014年06月20日 21時54分


 女性の尊厳を傷つけるような政治家の不適切な発言は、これまで繰り返されてきた。

 自民党太田誠一・元衆院議員*2は2003年6月、早大サークルの集団婦女暴行事件に関して、「(集団暴行する人は)まだ元気があるからいい。正常に近いんじゃないか」と発言。07年1月には同党の柳沢伯夫・元厚生労働相が講演で「(女性という)産む機械、装置の数は決まっている。あとはひとり頭でがんばってもらうしかない」と述べた*3。2人とも次の国政選挙で落選した。

 また、日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長も昨年5月、沖縄県に駐在する米軍司令官に「もっと風俗業を活用してほしい」と発言し、その後「不適切だった」と撤回した*4。【奥山智己】
http://mainichi.jp/select/news/20140621k0000m040094000c.html

石破茂の反応;

都議会ヤジ:発言者は名乗り出ろ 自民・石破幹事長

毎日新聞 2014年06月21日 10時54分(最終更新 06月21日 11時12分)


 自民党石破茂幹事長は21日の読売テレビ番組で、東京都議会の一般質問中にみんなの党会派の女性議員にセクハラとも取れるやじが飛んだ問題に関し、発言者は自ら名乗り出るべきだと強調した。「誰であれ『自分でした』と言っておわびすべきだ。仮にわが党であったとすれば、党としておわびをしなければいけない。大変申し訳ない」と述べた。

 「産めないのか」などのやじが、自民党会派の席から発せられたとの指摘があることについては、「今の時点で自民党議員と決まったわけではない。特定して言っているわけではない」と述べるにとどめた。(共同)
http://mainichi.jp/select/news/20140621k0000e010184000c.html

これはまっとうな反応というべきだろう。しかし、石破氏はもっとラディカルな危機感をもった方がいいのではないか。今回の野次事件は、たんにお下劣とか女性差別といったことを超えて、自由民主党という政党のアイデンティティに関わる疑問を投げかけていると考えられるからだ。つまり「自由民主党Liberal Democratic Party)」を名乗る政党に自由主義者(liberalist)がいるのかどうかという問題。今回の事件の総括の仕方によっては、真剣に政党名から「自由」を取り外すこと、或いは「自由」というのはせいぜい経済的な新自由主義を意味するのみであって、政治的・社会的な自由主義を意味するとは限らないということを真剣に議論した方がいい。
ヒポポ照子「結婚・出産をしない女に価値はないのか〜セクハラ都議会野次を考える〜」*5というテクストに曰く、

しかしこの野次は、既婚未婚、子持ちの如何にかかわらず、あらゆる女性への蔑視につながる。結婚する・しない、子供を産む・産まないは女の義務ではない。あくまでも選択肢であり、決定権は個人にある。あらゆる国民が男女間の結婚をし、子供を産み育て、しっかり働いて給料をもらい、納税をして、ほどよきところで人生を終える。野次を飛ばした議員は、そんな一生を過ごすことが都民のロールモデルでありその道から外れることは「良き人間として認められない」、そう言っていることと同義ではないか。

「だってみんながそうじゃないと、困るじゃないか」

 そんな言い訳が聞こえてきそうである。だが「良き生き方」を個々人に押し付ける社会は、果たして「良き社会」なのか? 一面的な価値観の呪縛が、どれだけ多くの個人を傷つけ、結果的に「良き社会」を損なうことになるということを、野次を飛ばした議員は知っておくべきだろう。

 そのうえ女性が結婚して子供を産んだら産んだで、働き続ける女性には「子育てに専念しろ」「子供がかわいそう」と同じ口で言うのだろうから、こちらは空いた口が塞がらない。女は政治にかかわるな、とでも言いたいのだろうか。

〈良きこと(good)〉の公的な強制に反対するのが自由主義なのではなかったか。