昨年のhttp://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090624/1245863553とかに関係するか。
Sharon Begley “What’s really Human?” Newsweek August 2 2010, p.20
米国で心理学の実験の殆どは大学の学部生を被験者として行われているが、その結果は論文、教科書、通俗書などを通じて、「普遍的で進化の帰結である人間本性=人間的自然の側面(aspects of human nature: universal and the result of evolution)」として流通する。でも、それって人間一般じゃくなくて、或る文化、即ち”WEIRD culturesに特有なものなのでは?*1 という疑問。ブリティッシュ・コロンビア大学のJoseph Henrich*2の比較研究が引かれる。
Joseph Henrichの論文は彼のサイトを通じてPDFで読める;
Joseph Henrich, Steven J. Heine & Ara Norenzayan “The weirdest people in the world?” Behavioral and Brain Sciences(2010), pp.1-75
http://www2.psych.ubc.ca/~henrich/pdfs/WeirdPeople.pdf
さらに短い論説として、
Joseph Henrich, Steven J. Heine & Ara Norenzayan “Most people are not WEIRD” Nature 466(July 2010), p.29
http://www2.psych.ubc.ca/~henrich/pdfs/Weird%20Nature.pdf
さて、
Katie Baker “Why Do IQ Scores Vary by Nation?” Newsweek August 2 2010, p.14
IQの国毎の差異は(レイシズム丸出しのものを含めて)様々な説明が行われてきた。この記事では、ニュー・メクシコ大学のChristopher Eppigらの研究が紹介されている。Eppigらによれば、IQの国毎の差異は乳幼児期における感染病の割合と相関関係がある。彼らの理路は以下の通りである。脳は人間の身体の中でも最もエネルギーを食う器官であり、新生児の場合、そのエネルギーの90%近くが脳に振り向けられている。マラリアなどの感染病に罹ると、病原体が脳組織を直接攻撃しうるだけでなく、脳に振り向けられるべき栄養分が闘病のために免疫系によって使われてしまうということもありうる。それは脳の発達に何らかの妨げをもたらす。Eppigらによれば、平均のIQスコアが低い国々(赤道ギニア、カメルーン、モザンビーク、ガボン)は世界でも乳幼児期における感染病の割合が最も高い国々である。逆にIQスコアの高いシンガポール、韓国、中国、日本、伊太利は感染病の割合が低い。要するに、その国の平均のIQは(特に乳幼児の)安全な飲み水、ワクチンなどへのアクセスに強い影響を受けていることになる。またこうしたことどもが改善されれば平均のIQは上がるということになる。
勿論、IQの場合、そもそもその指標自体がWEIRD文化に特有のものでないかどうかを常に疑ってみる必要があるけど。