看護と言語

『読売』の記事;


「日本で看護師」断念の帰国続々…漢字など壁

 EPA(経済連携協定)に基づきインドネシアとフィリピンから来日した外国人看護師・介護福祉士候補者の中途帰国が相次ぎ、受け入れが始まった2008年以降、計33人(今年7月1日現在)に上っていることがわかった。


 日本の国家試験突破の難しさなどから、将来の展望が見いだせずに就労をあきらめた人が少なくないと見られる。

 候補者は、これまで998人が来日。国内の施設で働きながら勉強し、3〜4年の在留期間に国家試験に合格すれば本格的に日本で就労でき、そうでなければ帰国するのが条件だ。しかし、漢字や難解な専門用語が試験突破の壁になり、合格者は昨年がゼロで、今年は看護師3人のみ。

 あっせん機関の国際厚生事業団によると、中途帰国したのは、今年度来日したばかりの118人を除く880人中、インドネシア15人(うち看護師12人)とフィリピン18人(同11人)の計33人。特に、合格率1・2%だった国家試験の合格発表後に当たる今年4月以降に中途帰国した看護師が計11人に上っていた。

 こうした問題を受け、厚生労働省は今月、看護師国家試験に使われる難解な専門用語について、平易な言葉への言い換えなど、何らかの見直し方法を有識者検討会で集中的に審議。来月初めにも提言にまとめ、来年行われる次回の国家試験に反映させる方針だ。

 また、政府は6月に閣議決定した「新成長戦略」で、2011年度中に実施すべき事項として「看護師・介護福祉士試験の在り方の見直し(コミュニケーション能力、母国語・英語での試験実施等の検討を含む)」と明記、外国語による国家試験実施の可能性に言及している。

 ◆看護師国家試験=看護師の免許を取得するための国家試験。保健師助産師看護師法に基づき、国が年1回実施している。日本の大学看護学科や看護学校を卒業するなどした人のほか、EPAに基づく看護師候補者も、日本語などの研修を受けたうえで病院などで就労し、同等の知識、技能があると認められれば受験資格が得られる。
(2010年7月9日03時04分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100709-OYT1T00108.htm

医療機関内のスタッフ間のコミュニケーションは原則として英語で行うとすればこの問題は取り敢えず解決する。簡単なことだ。しかし、それがクリアされたところで、より本質的な問題に直面するだろう。ナーシングという技術の重心は患者とのコミュニケーションにある。患者は「難解な専門用語」やのっぺらぼうな〈日本語〉を使って生活しているのではない。つまり、その土地の方言を理解しながら「難解な専門用語」に頼らず患者とコミュニケーションする能力の方が重要なのである。また、そちらの方が難しい。多分外国人にとってだけでなく日本人にとっても。