「無戸籍」

『読売』の記事;


「学校通わす金ない」親が出生届けず無戸籍で20年

 埼玉県鳩ヶ谷市の無職男(20)が、埼玉県警武南署に未成年者略取容疑などで逮捕されるまで、戸籍がなかったことが30日わかった。


 両親が「戸籍を取っても、学校に行かせる金がない」などと出生届を出していなかったためといい、男は義務教育を受けずに成長した。男は逮捕後の2006年10月、戸籍を取得したが、法務省は「聞いたことがない事案」と話している。

 同署によると、男は06年6月25日、鳩ヶ谷市の路上で、女児(当時4歳)に声を掛けて、スーパーのトイレに連れ込み、下着を脱がせて盗んだなどとして、同10月、未成年者略取と窃盗容疑などで逮捕された。男は現在、公判中。

 男は、同署の取り調べの際、名前や住所、生年月日は答えた。しかし、戸籍の所在地は知らなかったため、同署が母親に確認すると、戸籍がないことが判明した。

 男は1986年、自宅で生まれた。両親と12歳上の姉がいたが、両親が経済的に苦しく、出生届を出さなかった。男は、小中学校にも通わず、日中は自宅でテレビを見るなどして成長。友達もなく、両親らが読み書きを教えていたが、今も平仮名程度しか書けないという。姉は戸籍があり、学校に通っていた。

 同署と鳩ヶ谷市は、男の逮捕後、さいたま地方法務局に相談して、男が戸籍を取得できることを確認、男は20歳で初めて戸籍を取得した。

 法務省によると、過去には、両親の離婚調停中に生まれたため、戸籍に登録されないままになっているなどのケースはあったが、経済的な理由から親が出生届を出さず、戸籍に登録されない事例が明らかになったのは初めて。

 文部科学省によると、子供が失跡してしまったり、極端に病弱だったりした場合は、「就学免除」などの措置が取られるが、今回のような例は「これまで把握していない」と話している。

 早稲田大学大学院法務研究科の棚村政行教授(民法)は、「戸籍は教育、給付などすべての生活の基盤。親としての義務を怠っており、虐待の一種。長年気づかなかった地域社会や行政の責任もある」と話している。
(2007年1月30日14時36分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070130i207.htm

『誰も知らない』の子どもたちも「戸籍」はなかったんだっけ。
或いは、母国にいながらオーヴァー・ステイの外国人と同じ状態。
「両親」がもう少し短絡的な思考をする人たちだったらこういうことは起こらなかったのかも知れない。「学校に行かせる金がない」とはいっても、それは6年も先のこと。目先には児童手当の支給とかがあるじゃない。
この男にとっての〈他者〉はどういうものだったのかを想像してみる。先ずは家族。それから、近所の連中は? 親戚は? 以上が彼のUmweltにおける他者だったとすると、Mitweltの他者は? 先ず家族が語る他者がいる。「今も平仮名程度しか書けない」ということだけど、新聞は読めたのか。「小中学校にも通わず、日中は自宅でテレビを見るなどして成長」したということだと、彼にとっての他者というのはTVの登場人物たちであり、彼にとっての世間というのはTVのスクリーンに映っていた光景だったということになるのか。