風邪から抜け出しかけて

先週半ばから風邪を引く。いちばん先週は仕事が入って、睡眠時間も極度に短かったということもあるが、土曜日の夕方に仕事をフィニッシュさせて、日曜に蘇州に行った辺りがいちばん調子が悪かった。
蘇州に行った目的は先月オープンした「蘇州博物館」新館*1に行くことと、日本でも評判が高いらしい麺の店「同得興」に行くこと。
蘇州博物館の方は何よりも、所蔵品を観るよりも貝聿銘(I. M. Pei)がデザインした空間そのものを体感すべき。白い壁とグレイのフレームの組み合わせによって構成されたその建物は、周囲の風景と調和を保ちつつ、けっして複雑ではない幾何学的構成に凛々しさを感じさせる。私は建築における美は第一に曲線にこそあると思っていたのだが、蘇州博物館で数時間過ごして、やはり直線も美しいなと思ったのだ。貝聿銘はここでは(窓も含めて)曲線を全く使っていない。蘇州博物館は建物の裏に池があるという構成になっているのだが、この池を巡っては、それが中国的か日本的かというのが論争になっていたようだ。特に池の端が砂利の濱になっており、そこに置かれた石も中国庭園では定番の太湖石を使わずに、日本画の題材によくある磯の岩のような石が使われている。これが日本の石庭に類似しているのではないかということなのだが、私が見たところ、日本庭園とは違う。所謂中国庭園とも違うし、つまりはオリジナルなのだ*2。寧ろ、〈日本〉的なものを感じたのは玉砂利を敷き詰めたエントランスの空間。
「同得興」だけれど、その店の住所をメモしておくのを忘れたのだが、何しろ『上海Whenever』11月号には「「蘇州では知らない人はいない」とも言われるこの超有名店は、朝6:00の営業開始から、大勢のお客さんではち切れんばかり」(p.65)と書いてあるので、タクシーの運転手に言えばすぐに連れていってくれるのだと思った。しかし、タクシーの運転手は不知道といい、「人民路」にあるという記憶を手がかりに、人民路を端から端まで走っても見つからなかった。かくして、私の風邪は最悪の状態になった。
12月1日の午前の飛行機で帰国ということになる。

*1:http://www.szmuseum.com/

*2:Cf. 令狐磊「光影叩問 蘇州博物館新館」『週末画報』2006年11月25日。この記事によれば、この建築空間では光と影の戯れこそが重要だということだが、残念ながら、訪れた日はどんよりとした曇りで、その光と影の戯れを味合うことはできなかった。