『ワグナーと哲学』など

数日前に買った本。

周保松*1『自由人的平等政治(増訂版)』*2生活・読書・新知三聯書店、2013


序 政治哲学作為道徳実践(銭永祥)
自序 重視社会正義
増訂版序


第1章 契約、公平與社会正義
第2章 道徳平等與差異原則
第3章 資本主義最能促進自由嗎?
第4章 自由主義、寛容與虚無主義
第5章 穏定性與正当性
第6章 正義感的優先性與契合論
第7章 康徳、永遠和平及国家主権
結語 甚麽是自由主義


跋 行於所当行――我的哲学之路
附録1 羅爾斯的問題意識
附録2 自由之為好
参考書目
索引

潘公凱『現代藝術的辺界』生活・読書・新知三聯書店、2013


論西方現代藝術的辺界
関於藝術辺界問題的対談
(一)対談丹托*3
(二)対談舒斯特曼*4
(三)対談貝爾廷*5

代後記 弥散與生成

また李爽『爽 七十年代私人札記』(新星出版社、2013)。
李爽は、中華人民共和国初の現代アート集団「星星画会」の創始者のひとりで、仏蘭西の外交官Emmanual Bellefroidと恋愛し、1981年北京で同棲を開始するが、国家権力の逆鱗に触れ、逮捕され、「国家尊厳」を毀損した廉で「労動教養」*62年の処分を受けた。Emmanual Bellefroidは帰国を余儀なくされた。1983年にミッテラン大統領は訪中に際して、邓小平と直談判し、李爽の釈放と出国を認めさせた。李爽はその後Emmanual Bellefroidと結婚し、仏蘭西に定住。
それからBryan Magee Wagner and Philosophy (Penguin Books, 2001)。そういえば、今年はリヒャルト・ワグナー*7生誕200周年なのだった。

Wagner and Philosophy

Wagner and Philosophy

或るプロポーズ

東京スポーツ』の記事;


幸福実現党が自民に連立呼びかけ
2013年07月20日 08時00分


 幸福実現党*1の矢内筆勝党首(51)が18日、都内の日本外国特派員協会で記者会見を行った。

 矢内氏は外国人記者を前に「我々の母体は宗教法人『幸福の科学』。参院選で47都道府県すべてに候補者を立てたのは我々と自民党だけ。それだけ日本の未来に責任を負う覚悟で戦っている」とあいさつ。「日本の国防・安全保障」「歴史観」など党としての主張を紹介した。

 まず、中国が領海侵犯を繰り返している尖閣諸島について「日本の固有の領土」と強調したうえで「中国は尖閣諸島を武力を使ってでも自分たちのものにしようとしている」と警鐘を鳴らした。また、北朝鮮の核弾頭小型化への動きに懸念を示し「国防は待ったなしの段階。平和のための抑止力を強化しないといけない」と語った。

 続いて、中国政府が主張している南京大虐殺は「中国共産党による歴史の捏造であり、プロパガンダ」とし、韓国政府が主張する従軍慰安婦の強制連行については「朝鮮半島の女性を拉致・連行したことは一切なく、事実無根。この場で、特に海外の方に伝えたい」と語るとともに「Fabrication(でっちあげ)」と書かれたボードをかかげた。

 参院選での圧勝が確定的と見られる安倍自民の“選挙後”について矢内氏は「政策の異なる公明党と連立を組んでいる限り、安倍さんはしたいことができない。姿勢が問われる」。同時に「安倍さんは保守の思想を持っている。『自公』ではなく、『幸自』を実現したい」との大胆発言を繰り出して、まさかの「幸福・自民連立政権」の実現を呼びかけた。結党以来、初の国政選挙当選者誕生となるか、注目される。
http://www.tokyo-sports.co.jp/nonsec/social/164586/

いくら自民党の右傾化というか脱自由主義化が進んでいるとはいっても*2、「幸福実現党」と組むことはないだろう。歴史認識とかでも、(いやいやではあっても)何とか言い繕っているのに、「幸福実現党」と組んだら、それは日本の〈歴史修正主義国家宣言〉に等しいよ。その先は、国連脱退?

「テーマパーク化」(阿部潔)

『毎日』の記事;

時流・底流:参院選に言いたい 監視社会−−関西学院大教授・阿部潔さん

毎日新聞 2013年07月15日 東京朝刊
 ◇テーマパーク化、風潮に懸念−−関西学院大教授(社会学)・阿部潔さん(49)

 権力による監視や管理強化に対し、主にジャーナリズムや論壇で、それが個人の自由やプライバシーを侵害すると批判されてきた。しかし、現実はそうした対立構造ではとらえきれなくなっているのではないか。

 6月28日に東京都練馬区で小学生が切りつけられる事件があった。その4日後、埼玉県坂戸市の公園で「小学生が刃物を持った男性に襲われた」と一時、大騒ぎになった。小学生の訴えを受けた学校関係者がそう通報したためだ。しかし、男性が持っていたのは木の枝で、小学生がベンチで寝ていた男性を携帯電話で撮影しようとして男性が怒ったのが真相だった。この騒動は近年の日本社会を象徴していると思う。見知らぬ人間への過剰な警戒から、何かあるとすぐに浮足立つ。メディアも含め、それに疑問を持つ人は少ない。

 日本で、面識のない人に危害を加えられる事件は少ない。犯罪白書によれば2011年に検挙された殺人事件の9割は、加害者と被害者に面識があった。公共空間での危険の実態と「見知らぬ他者」への人々のイメージがかけ離れている。

 「社会は安全でない」という世論の不安を反映して政治は「安全・安心」を繰り返し、多くの人に「見守ってもらうことで自由に楽しめる」という感覚が染みついていく。「見守る政治」への期待が日本の「監視社会化」の根底にある。

 それを徹底しているのがテーマパークだ。不特定多数が集まる公共空間だが、道ばたに酔っ払いがいたり、誰かが政治演説を始めたりすることは絶対にない。徹底した管理の下、全てが快適に期待通りに進む。その代わり、予期せぬ出来事や他者との出会いもない。監視・管理社会化は社会の「テーマパーク化」と言ってもいい。

 知人にはひねくれているとよく言われるのだが、サッカー日本代表が14年ワールドカップ出場を決めた時、「DJポリス」が東京・渋谷に集まったファンを軽妙な語りで誘導した美談も、それに通じると思う。「騒ぐのはいいけれど、社会の安寧を守るため、慎むべきところは慎んでください」というメッセージを、優しいキャラクターとしてのDJポリスが発する。路上に集まった若者は日本の出場を一体となって楽しく秩序正しく祝う。その様子は今風の心情的ナショナリズムとも親和的だ。
http://mainichi.jp/select/news/20130715ddm004070005000c.html

テーマパーク化は憲法改正とも無縁ではない。国民が国家を縛る仕組みの現行憲法は、デモなどでの国家批判も含めた表現の自由を保障している。だが、自民党憲法改正草案は「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」と国民を縛る規定を明記する。DJポリスのようにソフトに説得され「義務も必要だよね」と素直に受け入れてしまった時、私たちに保障されている自由は取り返しのつかないことになりはしないだろうか。そう懸念している。

 もう一つ考える必要があるのはソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)だ。そこでは、上下ではなく、仲間同士の水平な関係で監視される。学生たちはツイッターフェイスブック、ライン(LINE)で、友人の行動を逐一チェックしている。そこに監視という意識はなく、互いに見られていることで安心しているふしもある。

 仲間同士の「見守り合い」には誰の悪意も介在しない。しかし、システム側から見れば、いつ誰とどこに行ったというような情報を、自発的に提供してもらっていることにほかならない。実はそれが国家権力に筒抜けになっていたことは、米国家安全保障局(NSA)がフェイスブックなどから情報収集していた問題で明らかだ。

 多くの人がこうした現状に「引っかかり」を感じているのも事実だ。監視による秩序維持は、人間を信頼しないということでもある。どのようにして人々の間に信頼を生み出すかが政治の課題だろう。それは、経済がよくなったからといって達成できるものではない。【聞き手・日下部聡】
http://mainichi.jp/select/news/20130715ddm004070005000c2.html

阿部潔さんとは一度か二度お目にかかったことがあるのだが、その時の印象は、ハーバーマスな人は話しにくいな、というものだった(人違いか)。

北京爆発

『読売』の記事;


北京空港で爆発…車いすの男性、自作の爆発物か

 【北京=牧野田亨】中国中央テレビの公式ツイッター「微博」などによると、20日夕、北京市郊外にある北京空港第3ターミナルの国際線到着口の通路で、電動車いすに乗った男性が爆発物を爆発させた。

 男性は病院に搬送されたが、容体は不明。ほかに負傷者はいない模様。男性は何かのビラをまいていたという情報もあり、警察当局が動機などを調べている。

 男性は30歳代の山東省出身者で、爆竹の火薬で作った爆発物を使ったという。目撃者がインターネットで公開した写真や書き込みでは*1、男性は通路に車いすを止め、白い爆発物を握ったまましばらく両手を挙げていた。不審に思った警備員が近づいたところ、爆発物を爆発させたという。

 爆発後は施設内に煙が立ちこめたが、航空機の離着陸に影響はないという。
(2013年7月20日21時04分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20130720-OYT1T00787.htm

中新社やBBCの報道でも、背景や動機などについては、まだ明らかになっていないようだ。


周音「一名残疾人在北京首都機場引爆炸」http://legal.people.com.cn/n/2013/0720/c188502-22264925.html
“China blast at Beijing airport terminal” http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-china-23388448

李小龍40周忌

Juliana Liu “Hong Kong celebrates Bruce Lee's life and legacy” http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-23371090


7月20日李小龍(Bruce Lee)*1の40回目の命日。
上掲の記事から少し引用;


The struggling actor's first film as an adult, The Big Boss, was a surprise hit across Asia. Bruce Lee mania was born.

Jeff Yang, a Chinese-American author who has written extensively about Hong Kong cinema, believes Lee was a transformative figure for Chinese and Asian men in particular.

"He demonstrated to non-Asians that Asian men could be strong, charismatic and sexy. That they could own the screen and command box office dollars and the cultural spotlight," he said.

"And while it's taken decades longer for others to be given the same opportunity, there isn't an Asian or Asian American actor today who doesn't acknowledge the debt they have to Lee for opening people's minds to the potential of Asian men."

ここでコメントが引かれているJeff Yang氏*2は昨年の『ウォール・ストリート・ジャーナル』に”Why Bruce Lee Has More Kick Now Than Ever”というテクストを書いているな*3
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