1993語り

承前*1

常見陽平*2「90年代前半の空気感そのものだった森田童子http://blogos.com/article/303969/



主題は「森田童子」というよりは「1993年1月」。


なんといっても、私のような中年にとっては1993年1月から放送された『高校教師』の「主題歌の人」だった。同ドラマは、高校教師と教え子の禁断の愛、近親相姦など、衝撃的な内容が話題となっていたが、森田童子さんの「僕たちの失敗」がこれまた絶妙にフィットしており。

1976年発売のシングルに光があたり、採用されたわけだが。まるで90年代前半、その時代のリアルタイムの曲のようだった。まさに、私たちのために存在するかのような詩の世界観、空気感だった。#思わず、シングルだけでなく、当時、リリースされたアルバム(ベスト盤を中心に聴いたのだが)も入手したが、ますますその想いを強くした。

何度も講演や著書で触れていることなのだけど。1993年の3月。大学に合格し、春休みに母と一緒に上京しアパートを探していたときに、サングラスにパンチパーマといういかにもな不動産屋さんは営業車の中でこう言った。「お母さん、息子さんが一橋大学に入るだなんて、レールに乗ったようなもんだね」と。志望校に合格した喜び、憧れの東京での一人暮らしが始まることなどに胸を膨らませていたことなどから、照れつつもワクワクしたが、「そんなわけないだろ」と胸の中では思っていた。実際、1年後には「就職氷河期」が流行語大賞の部門賞を受賞した(言葉自体は1992年に生まれていた)。

よく「震災とオウムの年」である1995年が、何かの始まりや終わりと捉えられるのだけど、その前の93年、94年は大いなる模索の年であり。55年体制の崩壊など、政治においても変化があり。一方、渋谷系が話題になり始めたのもこの頃であり。なんというか、どこにもいられないような、でも何かが始まるような、妙な感じがあった。

高校教師 DVD BOX

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たしかに、1992年までは80年代の延長という感じで、良くも悪くも1993年から本格的に90年代が始まったという感じはある。

「唯一無二の存在」

斉藤博昭「日本映画で唯一無二の存在となった樹木希林。彼女が示す役者としての基本。そして、その後を継ぐ者」https://news.yahoo.co.jp/byline/saitohiroaki/20180613-00086437/


樹木希林*1は老女役で主役を張れる日本で殆ど「唯一無二の存在」になってしまったという。


八千草薫草笛光子吉行和子らは80代の現在も精力的に活躍しているが、どこか「おしゃれなおばあさん」という印象が拭えない。やはり「女優」という職業は、何歳になっても美しくあるべきという考え方もあり、たとえば樹木希林吉永小百合は、2歳しか年齢が違わない(75歳と73歳)のだが、では吉永小百合が自らのイメージを変えてまで、『万引き家族』の祖母役を演じることは、常識的に考えて不可能だろう。

これは日本映画に限られたことではないが、シニア以上の世代を主人公にした作品は、ここ数年、増えているとはいえ、まだまだ少数派。そこで主役を任せられる俳優となるとさらに限られ、「知名度」と「老いも演じられる」という条件を満たすのは、男優では何人もいるが、女優ではわずかとなる。ゆえに家族を描く是枝作品や、2018年でいえば『モリのいる場所』での山崎努の妻や、『日日是好日』の茶道の先生にように、準主役を任せられるのは、樹木希林しか見当たらなくなる。

NHK朝ドラにもよく顔を出す大方斐紗子(78歳)あたりも演技巧者のバイプレイヤーだが、樹木希林に比べれば一般的認知度は低い。演技力では遜色のない白石加代子(76歳)は、逆に個性が強すぎる。藤村志保(79歳)も凛とした美しさのイメージが先行する。

まあ樹木希林にとって、「老い」というのは『寺内貫太郎一家*2以来年季が入っているとも言えるわけだ。
寺内貫太郎一家 DVD-BOX 1

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さて、斉藤氏が樹木希林の「後を継ぐ者」として注目しているのが夏木マリ
ところで、『寺内貫太郎一家』のときはまだ悠木千帆だった。なお、樹木希林は「千代田女学園の中等部」で太地喜和子の「一学年上級」。但し、太地は文学座では悠木千帆(樹木希林)の6年後輩に中る(井田真木子『フォーカスな人たち』*3、p.172ff.)。
フォーカスな人たち (新潮文庫)

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「笑っている」

子どもと悪 (今ここに生きる子ども)

子どもと悪 (今ここに生きる子ども)

河合隼雄『子どもと悪』*1から。


子どもがニコニコ笑っているのは歓迎される。しかし、子どもが小学生以上になると、笑いがいつも歓迎されるとは限らない。笑って叱られることもよくある。
私は子ども時代を思い出すと、先生に叱られたので一番多いのは、笑ったか、周囲の者を笑わせたかである。その原因のひとつは、私の子ども時代は厳粛な式が実に多かった。それは軍閥の方針でもあった。出征兵士を送ったり、遺骨を迎えたり、ともかく式が多かった。そして、そんなときに笑うのは、「悪」の最たるものであった。しかし、困ったことにそんなときに限って、何か笑うべきことが起こる。あるいは、ついいたずら気を起こして周囲の者が噴き出すような駄洒落などをささやきたくなる。というわけで、私はよく怒られた。中学生の頃は、「笑う門には、フグ来る」などと言っていた、笑うと必ず大人のふくれっ面を見ることになるからである。(pp.121-122)

教師として教壇に立っていて不愉快に感じるのは、生徒が何かわからないことでクスクス笑っていることではなかろうか。ほとんどの教師が「笑うな」とか「なぜ笑っている」とかは注意する。それは、ひょっとして自分のことを笑っているのではないかという不安にも通じるからであるが、ともかく、「笑う」ということは、教師の権威をないがしろにしていると感じられるからではないだろうか。(p.122)
これは「笑い」に限らず、何を言われているのかわからないという「不安」ということでは? (排外主義の端緒である)外国語に対する不安も、何をいっているのかわからない不安であるといえる。

青だったら?

NHKの報道;


阪神電車のオレンジ色は巨人を連想」 株主が指摘
2018年6月13日 22時49分


阪急阪神ホールディングス株主総会が13日大阪市で開かれ、株主が、阪神電車に、巨人を連想させるオレンジ色が使われていると指摘したのに対し、会社側は、数年後に車両を新たに造る際、意見を参考にするという考えを示しました。

総会では出席した株主が、阪神電鉄の特急や急行の車両に、巨人を連想させるオレンジ色が使われていると指摘しました。

これに対して会社側は、今の特急や急行用の車両の色は、阪神・淡路大震災以降、明るい色として採用したと説明しました。

さらに会社側は、今の色について「評判が悪いようだ」としたうえで、「車両を新しく造る時期が数年後にはやってくるので、今回の意見を参考にしながら考えていきたい」と述べ、新たに車両を造る際に参考にする考えを示しました。

また株主が、阪神が優勝から遠ざかっていることを取り上げたのに対し、会社側は「タイガースに対する熱い思いを聞かせて頂いた。身にしみて今後のことを真剣に考えねばならないと決意を新たにしている。これからも選手・監督らを鼓舞していくので、応援をお願いします」と述べました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180613/k10011476891000.html

青い電車だったら、ドラゴンズを連想させる! というクレームがつくのだろうか。赤い電車カープを連想させるからNGだね。
ところで、大森一樹のメジャー・デビュー作は『オレンジロード急行』*1。但し、そこで「オレンジ」は和歌山県を意味する。
オレンジロード急行 [VHS]

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