リゾームのないリゾーム

澤野雅樹『ドゥルーズ入門』*1から。
「地衣類」*2について。


この、いかにもリゾーム状の生き物はしかしリゾーム(つまり根)をもたない。さしずめ根無しリゾームとでも呼ばれるべきこの奇怪な生物は表面にとどまるがゆえ支持体から栄養を吸い上げることもない。だから地衣類はそれが舐めるところではなく、空を見上げ、大地の皮膚病と悪態をつかれる表面から栄養を摂取する。あたかも岩石が皮膚病を発症したかのような異変を思わせる一方、種類によってはまるで草間彌生*3が描いたかと錯覚させるような連続模様を創出して見る者を魅惑する。実際、地衣類の芸術家たちは、赤い斑点模様で樹皮の表面を覆い、あるいはかわいらしい星形模様で表面を彩ったり、あるいは斬新な色使いの生地みたいなデザインを施したりする。地衣類をまとうことにより鉱物は植物になり、無骨な岩石がしなやかな動物になる一方、植物は地衣類と接続することにより鉱物になり、あるいは皮膚を病んだヒトになる。(p.208)