2022年のノーベル平和賞は、露西亜の人権団体「メモリアル」*1、ウクライナの人権団体「市民自由センター」、ベラルーシの人権活動家アレン・ビャリッツ氏が受賞した*2。
毎日新聞は、「メモリアル」の幹部のひとり、スヴェトラーナ・ガーヌシキナさん*3にインタヴューを行っている;
大前仁「強権との闘い 国境を越え連帯」『毎日新聞』2022年10月9日
曰く、
ガーヌシキナ氏は7日、毎日新聞モスクワ支局助手の電話取材に「全てのロシア人が悪いとみなされているときに、我々がウクライナやベラルーシの同僚と切り離されたわけではないと認められた」と述べた。そのうえで「(人権のような)明確な価値観は国境よりも重要だ」と言明。互いの国民が協調できる余地があるとの考えをにじませた。
メモリアルは、スターリン時代に起きた粛清の犠牲者の名誉回復た避難民支援などに取り組んできた。ガーヌシキナ氏は強権政治がまかり通ったソ連時代から人権問題に取り組んできた「歴戦の闘士」と言える。
もともとは大学の数学教師だったが、が、1988年に当時はソ連を構成していたアゼルバイジャンとアルメニアの両共和国が衝突し多くの避難民が生まれると、支援活動に関わるようになった。
90年には非政府組織「公民としての支援」を発足させ、代表に就任。翌91年に2度にわたる「チェチェン紛争」(94~96年、99年から2009年)では多くの避難民支援に当たった。その後もロシアから強制帰国させられる恐れがある滞在者の支援や、シリアやアフガニスタンなどからの難民の認定にも取り組んできた。16年の下院選では改革派政党「ヤプロコ」から出馬したが、当選はかなわなかった。
00年に発足したプーチン政権は年々、強権の度合いを増し、人権尊重を訴えてきたメモリアルを敵視するようになった。16年には「外国の代理人」に指定し、その活動に制限を加えた(略)政権の意をくんだとみられるロシア最高裁は21年12月、法律違反を理由にメモリアルに解散命令を出し*4、今年*5に入って解散に追い込んだ。メモリアルは、ロシア国内法に基づけば存在しない状態でノーベル平和賞を受賞することになる。
受賞が決まった7日、メモリアルはモスクワの裁判所で、これまで事務所として使ってきた建物の使用継続を求める裁判に臨んだが、却下された。ガーヌシキナ氏は「こんにちの(ロシアの)法廷はすでに壊れた機構だ」と嘆く。それでも、「地球に住む我々全員には共通するものがあり、それが結果を生んでいる」と語り、人権や自由といった価値観の重要性が今回の授賞発表で世界に発信されることの意義をかみしめていた。
*1:See eg. https://en.wikipedia.org/wiki/Memorial_(society)
*2:See eg. Nobel Prize Organisation “The Nobel Peace Prize 2022” https://www.nobelprize.org/prizes/peace/2022/summary/ Rob Picheta "Human rights advocates from Russia, Ukraine and Belarus share Nobel Peace Prize" https://edition.cnn.com/2022/10/07/world/nobel-peace-prize-winner-2022-intl/index.html
*3:See eg. https://en.wikipedia.org/wiki/Svetlana_Gannushkina
*4:SeeAP "Russian court orders shutdown of renowned rights group" https://www.pbs.org/newshour/world/russian-court-orders-shutdown-of-renowned-rights-group AP "Russian court shuts down a second human rights group in two days" https://www.pbs.org/newshour/world/russian-court-shuts-down-a-second-human-rights-group-in-two-days
*5:2022年。