八犬伝以前

忍足利彦「南総里見”正史発見”伝」『AWAFEEL』(房州日日新聞社)4、pp.12-13、2024


南総里見八犬伝*1にも登場する房州里見家の初代、里見義実の墓は、南房総市白浜町白浜にある「三峰山杖珠院」という曹洞宗の寺*2にある。この寺は1444年に義実自身によって創建されたと伝えられている(p.12)。但し、墓は「山津波」のために流失し、後に再建されたもの(p.13)。また、 杖珠院の本堂には里見家初代義実、2代成実、3代義通、5代義豊の木像がある(ibid.)。
地元に残るのは犬の八房も八犬士も登場しない実在の戦国大名としての里見家の遺物である。
さて、広告を見ると、「里見氏を大河ドラマに」することを目指す「里見氏大河ドラマ化実行委員会」*3という団体があるのを知る。伊能忠敬香取市に絡んだ『大河への道』という映画もあったけれど。ところで、〈大河〉というのは実は主役よりも脇役が重要なのだと思う。〈大河〉は群像劇なので、主役のほかにも(同時代の)それなりに有名な複数の脇役が必要になる。徳川家康を主役にしたら、脇役としての今川義元織田信長羽柴秀吉が洩れなくついてくるみたいな。『光る君へ』でも、紫式部のほかに、清少納言和泉式部が、藤原道長のほかに兼家、道兼、伊周、実資等が必要になる。だから、重要なのは、「里見」以外にどれだけの脇役を揃えられるのかということだと思う。
地元の期待とは全く関係ないだろうけど、『八犬伝』を書く滝沢馬琴曲亭馬琴)を主役にした大河は視てみたいと思う。山田風太郎の『八犬伝』は、八犬士の物語とそれを書く馬琴が交互にフォーカスされるのだった。