修辞学の問題など

承前*1

「前世紀の終わり頃、当時勤めていた会社の同僚が「コオロギはゴキブリに似ている」と言ったことがあった」という*2。「コオロギ」と「ゴキブリ」の類似性どころか、この2項が比較可能なものだということも考えたことがなかった。蟋蟀は跳ねるもの、ゴキブリは這うもの。形も、蟋蟀は種が近い蝗やバッタに似ているし、ゴキブリの形は(敢えて言えば)甲虫の方に似ているといえるだろう。
さて、類似に基づく比喩は直喩(simile)とか隠喩(metaphor)と呼ばれる。考えなければいけないのは、この場合、似ているから比喩がつくられるのではなく、寧ろ比喩が提示されることによって2項が似ている可能性が開示(発見)されるということだ。つまり、


コオロギはゴキブリのようだ。


という文が発話されることによって、吃驚した受け手は「コオロギ」と「ゴキブリ」の類似性或いは相違性を考えることになる。つまり、これまでは全く考えもしなかった「コオロギ」と「ゴキブリ」の比較検討を余儀なくされる。それは、以前の世界とは違うし、「コオロギ」と「ゴキブリ」が並び立つこともなかった以前の世界にまた戻ることも不可能だろう。
この件に関しては、取り敢えず佐藤信夫『レトリック認識』*3をマークしておく。

ところで、
だけど、キモかわいいと思う人もいると思うよ。昆虫キャンディも秘かな人気商品なんじゃないかな;


「昆虫入りキャンディー?昆虫が丸ごと入ったキャンディー?」https://www.mirainoshitenclassic.com/2018/03/i.html


さて、最近不図気になりだした直喩に、RCサクセションの「雨上がりの夜空に」*4の中の「ジンライムのようなお月様」というフレーズがある。「ジンライム」と「お月様」との類似性とは?