山下惣一

日本農業新聞』の記事;


農民作家 山下惣一さん死去 小さな農に一条の希望
7/12(火) 9:10配信



日本農業新聞

 「減反神社」が、直木賞候補となり地上文学賞を受けた農民作家・山下惣一(やました・そういち)さん*1が10日午後6時50分、肺がんのため佐賀県唐津市の病院で死去した。86歳。

 農業に従事する傍ら小説やエッセーなどの執筆活動を続け、「海鳴り」で第13回日本農民文学賞。国内外の農の現場を精力的に歩き、食・農を巡る問題を提言。「ひこばえの歌」「農家の父より息子へ」「土と日本人」など数多くの著書がある。アジア農民交流センターの共同代表や、小農学会の顧問も務めた。

 通夜は13日午後6時から、葬儀は14日午後1時から、いずれも唐津市山本648の1、JAからつ山本斎場で。喪主は長男の正人(まさと)氏。後日、有志でお別れの会を開く予定。


[評伝]小さな農に一条の希望
 唐津の小さな村から、近代化で壊れていく国を見続けた。小さな農の営みに、一条の希望を見いだした。農民作家の枠に収まり切れず、小農学会顧問を引き受けた。書いて、歩いて、笑って、怒って、よく飲んだ。人たらしで、「お師匠さん」と慕われた。

 昨年2月、「老農は死なず消えゆくのみ」と断筆を宣言。静かに筆を置いた。電話すると「もうよかろうもん」と笑ったが、晩年は病魔との闘いの連続だった。「シャインマスカット」に恋をして作り始め、夫婦で食べるのがなにより楽しいと言っていたのに。百歳まで生きると豪語したのに。息子には「死んだら老衰と言ってくれ」と強がっていたのに。

 「生涯一百姓」を貫き、情と理の人だった。文章に土の匂いがした。生来のあまのじゃく、偽善を容赦なく切った。残した語録は数知れない。「成長よりも安定、拡大よりも持続、現在よりも未来を大切に」。文字通り遺作となった「農の明日へ」(創森社)では、田畑という命綱を未来永劫(えいごう)リレーしなければならない、と書いた。絶筆を胸に置き、感謝の言葉とする。さようなら惣一さん。(論説委員・緒方大造)
https://news.yahoo.co.jp/articles/9cbf8f77393fd4fdeb7b52501ffe57ccad2fd010