流れて何処へ?

山路力也「カツオを大量窃盗? なぜ焼津港でカツオは横流しされたのか?」https://news.yahoo.co.jp/byline/ymjrky/20211117-00268348


曰く、


2021年10月、静岡県焼津市で水揚げされた冷凍カツオ4.5トンを盗んだとして、水産加工会社の元社長や役員、焼津漁協職員、運送会社社員など7人が逮捕されたニュースが注目を集めている。焼津漁港*1は海産物の水揚げ額が412億円(2020年)と日本一で、冷凍カツオの水揚げ量も約89,000トンと日本一を誇る港だ。

 水揚げされたカツオは漁協が計量所で計量した後に、水産会社を通して水産加工会社へと納品される。今回逮捕された漁協職員はいずれも計量部門を担当しており、水揚げされたカツオは計量所を通さずに水産加工会社の倉庫に運ばれたという。水産加工会社役員からは見返りに漁協職員らに報酬が支払われていたとみられている。

 これによって、漁業者(漁師)である多くの漁協組合員たちや中抜きされた水産会社が被害を受けている。今回の事件について、焼津漁協は10月12日に調査委員会を立ち上げた。現場関係者から聞き取り調査を行い、事件の全容解明と再発防止を目指すという(参考記事:読売新聞オンライン 11月15日)。

勝川俊雄「水産流通の闇:漁協職員のカツオ横流しは、なぜ起きたのか」https://news.yahoo.co.jp/byline/katsukawatoshio/20211116-00268324


先ず、


事件の背景を理解するために、水産流通の仕組みについて説明します。漁業者は獲ってきた魚を漁港に水揚げして、漁協に販売を委託します。これを「委託販売」と言います。漁業者が直接水産物を売るのはまれで、日本に水揚げされた水産物のほとんどが委託販売で取引されています。

販売を委託された漁協は、水産加工業者や流通業者を集めて、競り(セリ)や入札を開催します。売買が成立した場合には、販売金額の5%の手数料が、漁師と加工流通業者のそれぞれから漁協に支払われます。販売手数料は漁協の収入源であり、ブランド化などの販売努力をしている漁協も多く存在します。

何故、「横流し」が何十年もばれなかったのか。
漁師は魚の重量や数量を船の上で正確に測定することが難しく、水揚げ港の漁協に委ねていること;

なぜ、水産物を抜き取ってもばれなかったかというと、委託販売において、水産物の重量を計測するのは、漁協の仕事だからです。もちろん、漁業者も大まかな漁獲量は把握していますが、船は揺れているので、水産物の数量を正確に量るのは困難です。素早く漁港に持って帰って、陸上で計測する方が合理的なのです。漁業者は、水揚げの後は、燃料や食料の補給をして、再び漁場へと向かいます。久々の陸地を満喫しつつも、出港準備で忙しい漁業者が、計量や販売に立ち会うことはほとんどありません。漁協職員が漁獲の数%を中抜きしたとしても、漁業者は「思っていたよりも少なかったな」と考えるだけで、不正には気づきません。結果として、不正が長期常態化していったのでしょう。委託販売は、漁業者と漁協の信頼関係で成り立っていたのですが、今回の不正はその信頼を最悪の形で裏切ってしまいました。
また、焼津港のような大きな漁港では、漁師と陸の関係者たちが顔見知りではないこと;

漁協がその気になれば、不正は可能です。ちょろまかした水産物を自分で食べるなら個人でもできる犯行ですが、横流し販売をするとなると、販売先や輸送手段が必要になります。今回の事件では、運送業者や加工業者などが関与していました。委託販売には、多くの漁協職員や業者が関わるので、組織をまたがる不正行為を隠し通すのは簡単ではありません。地元の漁民が利用をする小さな沿岸の漁港の場合は、水揚げする漁業者も、組合職員も、加工流通業者も、すべて地元の顔見知りで、いわば身内です。こういう場所で、漁協の職員が不正を働けば、時間の問題で漁業者も知ることになります。

焼津は遠洋漁業の拠点港であり、日本中から多くの漁船が水揚げに訪れます。水揚げする漁船の多くが、地域との接点が少ない他県の船であるという特殊事情によって、多くの組織が絡む横流しが、長期にわたって漁船に発覚せずに続いたのでしょう。日本から遠くの漁場で操業するカツオ・マグロ漁船は、そのときどきの状況によって水揚げする港を変えます。漁場から近い港が選ばれることが多いのですが、相場が良い場合には、少し遠くの港に水揚げすることもあります。今回の不正によって焼津を避ける漁船が出てくると、その分だけ漁協の手数料収入が減ることになります。

ところで、「中抜き」され横に流された鰹は何処に行きついたのだろうか。もし回転寿司の会社だったら、大火事になりそうだけど。