承前*1
『毎日新聞』の記事;
野嶋剛氏*3曰く、
中国、ノーベル平和賞の報道を規制か 速報削除、主要メディア報じず
10/9(土) 5:31配信
中国のインターネットなどで8日夜、同日発表されたノーベル平和賞の受賞者に関する速報記事が流れたが、その後に削除されて閲覧できなくなった。中国当局が、強権下で「表現の自由を守るため努力をした」とノーベル賞委員会に評価されたジャーナリスト2人の受賞報道について、不適切だと判断した可能性がある。
速報を流したのは、中国の通信社である中国新聞社や中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報。中国新聞社はノーベル賞委員会が発表した直後、受賞が決まった2人を似顔絵入りで紹介した。しかし速報はすぐに削除され、一部の転載された記事以外は閲覧できなくなった。その後も、国内の主要メディアは平和賞に関して報じていない。
ロシアやフィリピンで公然と体制批判を続けてきたジャーナリストへのノーベル平和賞授与に、中国当局が強く反応したとみられる。ノーベル賞全般については中国国内でも関心が高く、平和賞以外の各賞は連日報道されていた。
中国でメディアは中国共産党の「喉と舌」と位置づけられる。2010年に中国の民主活動家、劉暁波氏のノーベル平和賞受賞が決まった際は、当局が国内での報道を封殺し、各メディアは受賞決定を非難する当局の談話を伝えただけだった*2。劉氏は17年に事実上、獄中死した。【北京・岡崎英遠】
https://news.yahoo.co.jp/articles/cbab2015314109b304c2d04f09f076f59e5a0938
さて、比律賓の反応。
前評判では、香港の独立系メディアや民主活動家も受賞者候補に取りざたされていたが、結果的に、香港関係の受賞はなかったことで、中国も最初は一安心したはずだ。ところが、よくよく考えてみると今回の受賞者は、独立系メディアとして権力に対する異議申し立てが評価されたわけで、それもまた、言論の自由を制限する中国の現状を否定する文脈につながるので、報道規制を行うことに決めたのだろう。中国にとってノーベル平和賞は鬼門。2010年に服役中の民主活動家の劉暁波に平和賞が与えられたとき、中国は徹底的な情報封鎖を行って黙殺すると同時に、平和賞を与えた委員会のあるノルウェー政府にも抗議し、サーモンの輸入規制などの「制裁」も行った。香港についてもノルウェー政府に対して「平和賞を政治化すべきではない」と昨年から圧力をかけていたので、さすがに委員会も香港系の受賞者を選ぶ勇気はなかったと思われる。
『読売新聞』の記事;
比大統領府、3日遅れでノーベル平和賞決定を祝福…麻薬対策批判のジャーナリスト
10/11(月) 19:31配信
読売新聞オンライン
【ハノイ=安田信介】フィリピン大統領府は11日、ロドリゴ・ドゥテルテ政権の麻薬対策を批判してきたジャーナリストのマリア・レッサ氏(58)がノーベル平和賞受賞を決めたことに、祝福のコメントを出した。8日の受賞発表から3日遅れとなった。
ハリー・ロケ大統領報道官は記者会見で「一人のフィリピン人の勝利であり、うれしく思う」と述べ、レッサ氏への授与は「政権への非難ではない」と付け加えた。
ドゥテルテ氏側の受賞への反応が遅れたことについて、ロイター通信は野党議員の話として、大統領府が受賞決定に「いかに驚いたかを示している」と報じた。
レッサ氏が設立したオンラインメディア「ラップラー」は「なぜ大統領府は沈黙しているのか」と題した記事で、インターネット上の意見として「何年もレッサを黙らせようとしたドゥテルテが、ノーベル平和賞に黙らされた」などと伝えた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/189334a82b40c72b568944acb5f0e7b463543ba6