「現存する日本最古」

「Jazzyな音が流れる街」『なぎさ』(京浜急行電鉄)629、pp.3-8、2021


野毛の特集。


野毛の街*1は、横浜のジャズを語るうえで欠かせない。京急日ノ出町駅から路地を歩くと、「ちぐさ」の看板が目に入る*2。現存する日本最古といわれるジャズ喫茶だ。
ジャズ喫茶*3は、日本独自の文化として昭和初期に誕生した。大正時代、「ミルクホール」という牛乳やトーストを飲食店が生まれ、やがで喫茶店に。流行り出した喫茶店が、蓄音機を置いて音楽を聴かせるようになった。
ちぐさを開業したのは、吉田衛さん。20歳のとき、電気蓄音機と買い集めたレコードで店を開いた*4。多くのお客さんを楽しませたが、時代は戦争へ。敵国米国の音楽であるジャズのレコードは没収され、空襲で店も焼けてしまう。戦後間もない1948年、常連客からレコードが寄せられて再開。進駐軍も訪れ、新しい音楽に出会う拠点としてにぎわった。秋吉敏子渡辺貞夫、日野皓正らが通い、ここでしか聴けないレコードに耳を傾けたという。現在、スタッフとして店を運営する高橋清明さんはこう語る。
「当時、レコードは高価でとても貴重なもの。秋吉さんがいらして、何度も同じ曲をリクエストしては譜面に起こしていたそうです」(pp.4-5)