「米仏二極化」

松原隆一郎*1「米仏二極化する胃袋の未来」『毎日新聞』2020年5月23日


ジャック・アタリ『食の歴史』の書評。


音楽・医学から時間・愛・死・地政学。テクノロジー、そして海まで。数えきれないテーマと膨大なとしか言いようのないうような知識で人間社会の未来を占ってきた碩学が、「食」を軸に過去を振り返り、進むべき道を訴える野心作。いわば胃袋が語る人類の通史である。
「この密接な、宇宙的規模とさえ言える人間と職との関係は、実は猿人からホモ・サピエンスが漸進的に出現したときから始まった。この関係は、言語の使用から火の利用まで、人類のおもな急激な変化の源泉になった。……*2人間と食とのこうした関係からは、都市、帝国、国家の権力の把握の過程も広く説明できる。歴史と地政学は、何と言っても食の歴史なのだ」*3
松原氏が特に注目しているのは、アタリの「こと食に関する限り、世界史はアメリカとフランスの二大勢力が描いてきたという強烈な自負」である。「フランスの食文化は社会の礎として、食とともに会話を楽しむという社交を据える」。「これに対しアメリカの資本主義は、食の目的を「会話」と「美味」から効率と栄養へと置き換えた」。
因みに、「スローフード*4の発祥の地は伊太利(Cf. 島村菜津『スローフードな人生!』)。