「古代の夢の感覚」

承前*1

山村浩二「『ゆめみのえ』の夢と絵」『絵本のたのしみ』(『こどものとも』779[2021年2月号]折り込みふろく)


最後のパラグラフ;


作中では惠斎が鳥や魚になりきって見事に絵を描きますが、対象物に心を重ねることは、古代の夢の感覚とつながると考えています。万葉集には「夢に出てきた異性は、自分のことを想っている」と詠んだ和歌がいくつかあります。この主体の逆転は、作中では「タカ」の場面で描きました。現代人には荒唐無稽のようにも感じられますが、古代では、夢を神仏からのお告げと捉えたり、見た夢を交換、売買する歯があったり、いわば夢見の共同体が形成されていました。個人が孤立してしまいがちな現代に、それら古代の夢の捉え方は、自己と他者をつなぐ感性として、必要だと感じています。
そういえば、西郷信綱『古代人と夢』*2は物置の奥深くにあるのだった。
古代人と夢 (平凡社ライブラリー)

古代人と夢 (平凡社ライブラリー)

  • 作者:西郷信綱
  • 発売日: 1993/06/16
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)