「学力格差」は何故やばいのか(小熊英二)

承前*1

吉井理記「シリーズ 疫病と人間 社会学小熊英二・慶応大教授」『毎日新聞』2020年8月22日


コロナ休みは子どもたちの学力の格差を拡げる可能性がある。そもそも「学力格差」は何故問題なのか。小熊英二氏曰く、


まず、これ以上格差が開くと、学校教育そのものが従来のままでは立ち行かなくなる。授業について来られない生徒が小中学校で5割を超すようになると、学級崩壊の増加などで、学校としての秩序を保つことも困難になるだろう。お金に余裕がある家庭の子は私立学校に逃避し、後には荒廃した公立学校が残される。これは他の先進国などで実際に起きたことだ。
第二に、義務教育でつまずく子どもが大量発生したら、社会全体の活力が低下する。日本はトップ数%の上位層が優れているから発展した国というよりは、全体の平均的な教育レベルが高く、一般労働者の「質」が高かったゆえに製造業が強かった国だ。もし製造業やサービス業の労働者たちが、漢字の読み書きや簡単な計算ができない状態になったら、経済成長や社会秩序に影響が出る。
さて、次の指摘も抜書きしておく;

(前略)コロナの感染状況によっては、冬の入試が従来のまま実施できる保証はない。昨年度3月の国公立大学2次試験は一部中止になった。すでに英仏では入試をめぐる混乱が起きている。今のうちに対策を考えておかないと、混乱が生じ、日本の教育に対する社会的信頼が地に落ちることになりかねない。