感覚の「分散」など

承前*1

上東麻子「DVカウンセラー信田さよ子さんに聞く生きるための知恵 下」『毎日新聞』2020年12月12日


信田さよ子さんの話。
アルコール依存症」と「自殺」について;


アルコール依存症の人は自殺リスクが高いとされています。飲酒は時に突発的な自殺を誘発します。
何かに行き詰った時、つらい時に、酒を飲むのは自分を維持するために、壊れないようにするためです。しかしそれが習慣になると、お酒が切れた時に激しく飲みたくなります。アルコールが体から抜ける直前、お酒をやめて3日目などに、自殺衝動が高まるとも言われています。
コロナ禍による自粛期間中、お酒をやめ続けるための自助グループがミーティングを中止せざるを得なくなり、何年も断酒していたアルコール依存症患者が飲酒を再開してしまう例を多く耳にします。またそれまでは適度に飲酒していた人が、コントロールを失って急性アルコール中毒で救急搬送される例も多いようです。アルコールとうつとは表裏一体と言えるほど関係が深いのです。
「お酒を飲む代わりに何をすればよいでしょう」という質問に対して;

人と話すことです。おしゃべり、なかでも無駄口が大切です。どうでもいいことをしらふで話すことです。友達がいない人は、ネット交流サービス(SNS)でも構いません。特に男性は飲まないとおしゃべりできない人が多いですが、しらふで話せる人を周囲に何人か作っておくことが大事です。おしゃべりや会話ができるかどうかで老後の暮らしも違ってきます。
「自殺衝動」をやり過ごすには?

まず、その場から動くことです。自宅にいるなら家を出る。体を動かす、シャワーを浴びる、何かを食べる⋯⋯。身体感覚が得られる行動をとりましょう。なぜかというと、自殺は、脳内の考えが一点に集約された結果起きるからです。体を動かせば、感覚を分散させることができます。あくまでも危機対応ですが、わずか数分の間をとにかくやり過ごすのはとても大事です。