「とりあげなかった」人たち

司馬遼太郎を読む (新潮文庫)

司馬遼太郎を読む (新潮文庫)

松本健一*1司馬遼太郎を読む』に曰く、


司馬遼太郎は、幕末・維新期のほとんどの志士をその作品の主人公にとりあげたような印象がある。しかし、そうではない。かれがとりあげなかったか、とりあげても否定的だった一連の人びとがいる。
佐久間象山吉田松陰前原一誠、奥平謙輔、雲井竜雄西郷隆盛⋯⋯といった革命的ロマン主主義者の系譜が、これである。革命的ロマン主義者とは、かんたんにいえば、美しい世界を見ようとおもって現実には目をつぶった人である。昭和史や現代史でいえば、北一輝石原莞爾、それに三島由紀夫につらなる人びとであろうか。(p.73)