三島／大岡（メモ） - Living, Loving, Thinking, Again

伊藤智永「三島事件50年の軍と大衆」『毎日新聞』2020年11月７日

三島由紀夫の切腹（1970年11月25日）*1から今月でちょうど半世紀なのだった。
大岡昇平 *2の「三島事件」への反応について；

三島の葬儀は[切腹事件の]翌年１月24日、東京の築地本願寺で営まれ約８０００人が参列した。作家の大岡昇平はフィリピン・ミンダナオ島で死んだ戦友の二十七回忌を理由に欠席した。
大岡にも60年安保は転機だった。「軍事同盟と思っていたから、どうしても突っ張らなきゃならない」。改定阻止に期待し、敗れて虚無感にとらわれる。自民党政府から与えられた豊かさのお裾分けに喜ぶ大衆への失望は三島と同じである。だが、進んだ先は違った。ベトナム戦争における米兵の残虐が、フィリピンや中国での旧皇軍と重なり、長期連載「レイテ戦記」の執筆を始める。
結核と偽って徴兵を逃れた三島。戦争阻止のために行動しなかった自分に拒む権利はないと応召し、南洋で九死に一生を得た大岡。戦争体験の隔たりが、60年安保を経て二人の軍と国家に対する態度を大きく分けた。大岡には、言葉で戦うべき文学者でありながら私兵を組織し、武力へ逃げた三島が許せなかった。

その後の大岡について；

三島の葬儀の年の11月、大岡は日本芸術院会員に選ばれ、辞退した。毎日新聞の談話に「私は戦争で捕虜になった。死んだ戦友に対して常に済まないと思い生きているだけでも相当なのに、国から名誉を受け年金をもらうことはできない」とある。芸術院の前身は日中戦争開戦の１９３７年に設置された帝国芸術院である。88年死去。葬儀・告別式は遺志により行われなかった。

*1:See eg. https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20081126/1227722928 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20100620/1277038368 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20101126/1290795234 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20140725/1406262846 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170421/1492791778 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180531/1527781363