権力の行使

Helier Cheung*1 “VP debate: Did gender play a role in the interruptions?” https://www.bbc.com/news/election-us-2020-54467093


副大統領候補同士のTV討論。マイク・ペンス*2によるカマラ・ハリスの発言への割り込みが話題になっている;


Wednesday night's*3 vice-presidential debate was widely seen as civil, but with few memorable moments.

Yet one exchange that resonated strongly with many viewers - especially women - was when Kamala Harris responded to Mike Pence interrupting her by smiling and saying: "Mr Vice-President, I'm speaking… If you don't mind letting me finish, then we can have a conversation."

In fact, Ms Harris responded to an interruption with the phrase "I'm speaking" on three occasions.

Many considered these to be poignant moments that chimed with their own experiences of seeing women struggling for air time, or being interrupted by men in work situations.

この後でHelier Cheung記者も様々な比較を試みているように、女性差別と直ちに決めつけることはできないが、会話における割り込みは権力の行使の一形態であり、割り込み行為が非難されないこと、是認されていることは、そこに権力関係が存在することを示している。また、割り込まれた者から見れば、割り込みに対して抗議することを阻まれたり、抗議を真面目に聞いてもらえなかったりする場合、彼/彼女は権力作用を被っていると言えるし、それが特定の属性に結びつけられた場合、差別されているということができる。そもそも公準的に、会話においては、誰でも自らの番(turn)を全うする権利を有している。その他の会話当事者が自らの番を始めるには、現在話している人の番を他人に譲るという意思表示(例えば英語の場合だと、付加疑問文で表される)、センテンスの終了などが必要となる。


江原由美子好井裕明山崎敬一「性差別のエスノメソドロジ――対面的コミュニケ-ション状況における権力装置」『現代社会学』(アカデミア出版会)18、pp.143-176、1984


この論文は、日本におけるエスノメソドロジーが学説紹介の段階からオリジナルな調査実践の段階に踏み込んだという意味で画期的なものだけど、一般読者向けのヴァージョンもあって、たしかそれは大修館書店の『月刊言語』に掲載された筈。また、何れかのヴァージョンが好井裕明、山田富秋『差別と排除のエスノメソドロジー*4に転載されていたんじゃないかな。